FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

ロボットの機構(1)補足~平行リンク機構のロボットとリンクレスロボットの動作範囲の比較~

以前、ロボットの機構として平行リンク機構を紹介しました。 fa-robot-watch.comその中で、平行リンク機構のロボットは、リンク構造ではないロボットに比べて動作範囲が狭くなると書きましたが、もう少し具体的に説明しようと思います。 なお、今回の記事で…

ギガプレスはロボット業界にどう影響するか

トヨタ自動車がギガプレス(ギガキャスト)に乗り出すというニュースがありました。*1 motor-fan.jpこれを機に自動車の製造方法が大きく変わるのではないか?と言われています。 自動車業界と二人三脚で発展したロボット業界にも、当然影響があると思います…

協働ロボットの衝突試験(接触力測定)について②(測定装置・方法など)

前回の記事はほぼ規格の説明になってしまいましたが、後半の今回は実際の測定について紹介していきます。 ①を未読の方は、まずはこちらからどうぞ。 fa-robot-watch.com 測定装置の概要 力センサー・圧力センサー ばね おもり スライド機構 その他 測定方法 …

協働ロボットの衝突試験(接触力測定)について①(接触の分類・人体のモデル化など)

協働運転のシステム構築で、ロボットの接触検知機能*1を活用する場合、リスクアセスメントの一環として接触した時の人体へのダメージを評価する必要があります。 「どんな手順でどんな項目を実施するのだろう?」「まさか実際に人がぶつかってみるわけにもい…

ロボットの機構(11)~第3軸の補助にばね要素を使う構造~

以前の記事で、ばねによる動力補助を紹介しました。 ロボットの機構(3)~ばね要素~ - FA・ロボット業界の片隅から記事中の例では、第2軸を補助する例だけを紹介しましたが、第3軸にばねでの動力補助をする構造について紹介します。 多くの大型ロボットの構…

協働ロボットの動作速度の考え方と(スペック上の)高速化について

昨日今日の話ではないのですが、協働ロボットのスペック上の最高速度がどんどん速くなっている事情と注意点について書きたいと思います。 ロボットの最高速度について 協働ロボットの速度記載方法 協働ロボットで手先速度を記載する理由 以前までの協働運転…

"協働ロボット"は一言でくくれない(改めて整理)

過去記事で「協働ロボットを一言で言うのは難しい」と書きましたが、そのことについて掘り下げました。 fa-robot-watch.com はじめに 狭義の"協働ロボット" 広義の"協働ロボット" 改めて「"協働ロボット"は一言でくくれない」 はじめに 産業用ロボットはJIS…

ロボット業界のエコシステム構築の動き

以前の記事で書いたように、Universal Robots社のUR+の登場を受け、各社がロボットを中心とした周辺機器・ソフトのエコシステムを構築しようとしています。 fa-robot-watch.com以下では、UR+も含め、各社のエコシステム構築状況について調べてみようと思いま…

機械安全の情報がまとまっているサイト

機械安全について自分で学習する際に、参考になるサイトをまとめてみました。 厚生労働省 www.mhlw.go.jp やはりまずは、総元締め(?)の厚労省をお勧めします。関係リーフレット、関係テキストはもちろん無料でダウンロード可能です。 ロボット関連分野で…

UR+の衝撃~ロボット業界のゲームチェンジャー

Universal Robot社が展開する、「UR+」がロボット業界に与えた衝撃について書いていきたいと思います。 前置き プラグ・アンド・プレイとは ロボット業界のプラグ・アンド・プレイ 【本題】UR+のなにがすごいか 歴史は繰り返す Universal Robot社の思想 終わ…

安全対策をすると作業者が危険な行動をとり始めるという話

4月から自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務となりましたが、 関連記事で、興味深いものがありましたのでご紹介します。 merkmal-biz.jpイギリスの法律上、自転車でのヘルメットは任意なのだそうですが、 その一因として、ヘルメット着用が安全につなが…

協働ロボットは市場に定着するか(双腕ロボットの二の舞にならないか)

最近脚光を浴びている協働ロボットですが、今後この勢いで盛り上がり続けるか、逆にしぼんでいくのか、考えてみました。 双腕ロボットが流行った時期があった ハイプサイクルに当てはめて考えてみる 双腕ロボットはどうだったか 協働ロボットはどうか 国際規…

協働ロボット"だから"安全柵がいらないという誤解

「協働ロボットだから柵をつけなくてもいいんでしょ?」というのはよく聞くフレーズです。 が、ここにはいくつかの誤解が含まれていますので、解説していきたいと思います。 ※本記事は、私の私見も入っていますのでご了承ください。 誤解1・産業用ロボット…

KUKAの新ラインナップ KR FORTEC ultraはEV業界を意識した新商品(推測)

KUKAから大型ロボットの新しいラインナップが発表されました。 可搬重量 800 kgのKR FORTEC ultra重可搬ロボット | KUKA AGまだ発表されてから日が浅い*1こともあり、一般公開されている情報が少ないのですが、検索したところ下記のような記事が見つかりまし…

ヒトとロボットの協働作業のレベル分けについて5段階で説明

協働ロボットは柵が要らないロボット、となんとなく思っている方も多いと思います。 では人とロボットの「協働」とはいったいどんな状態を意味するのでしょうか? その疑問に答えるような論文がありましたので、紹介したいと思います。 ベースにした論文につ…

アーク溶接ロボットとスポット溶接ロボット

「溶接ロボット」と一言で言っても、大きく2つに方向性が分かれます。 それぞれどのような特徴を持っているか、重視される性能は何かなど、まとめてみました。 アーク溶接とは ロボットの特徴 有名なメーカ スポット溶接とは 有名なメーカ ロボットの特徴 …

ロボットの機構(10)~狭いところでうまく動く工夫~

下記の記事と関連した話です。 fa-robot-watch.com ロボットは干渉が大敵 プログラム次第で様々な動作ができる垂直多関節ロボットですが、大きな悩みの1つが干渉です。 ある姿勢をとろうとすると、周りの設備とぶつかる・隣のロボットとぶつかる・・・ロボ…

ロボットの動作範囲の記載方法についてのもやもや

産業用ロボットの動作範囲(最大リーチ)の記載方法についてです。 下記の記事を書くために調べていた時に気が付きました。 fa-robot-watch.com 6自由度での動作範囲記載 6軸の垂直多関節ロボットの動作範囲を論じる場合、下記の不二越のロボット動作範囲…

ロボットの機構(9)~協働ロボットの手首構造について~

今回は協働ロボットの手首構造についてです。 手首の関節について 通常の6軸多関節ロボットは、下記の図のような関節配置をしているものが多いです。 (当ブログのロボット構造の図示方法はこちらをご覧ください:本ブログでのロボット模式図について - FA…

ドメイン変更・ブログ名変更のお知らせ

独自ドメインに切り替えました。旧ドメイン https://fasumi.hatenablog.com/新ドメイン https://fa-robot-watch.comまた、ブログタイトルも変更しました。 ブックマークしている方はURLの変更をお願いいたします。有益な情報を発信し続けられるように頑張り…

ロボットの機構(8)~アーム伸縮7軸ロボット~

今回は7軸ロボットについてのお話です。 7軸ロボット 7軸ロボット、このブログを読んでいるような方ならご存じと思います。 冗長自由度を持ち、障害物を回避して作業ができるというものです。 一般的な7軸ロボットについては、こちらのYAMAHAのページを…

ロボットの機構(7)~似て非なる2種類のパレタイズロボット~

以前の記事でパレタイズロボットの仕組みについて説明しました。fasumi.hatenablog.com 3社のパレタイズロボット それでは、次の3社のパレタイズロボットを見てみてください。 川崎重工 CP180L CP180L | 川崎重工の産業用ロボットより引用 不二越 LP130F …

ロボットの機構(6)~てこの原理を活用したロボット~

今回は、機構で特色のあるロボットを紹介します。 MX700N | 川崎重工の産業用ロボットより引用 川崎重工のMシリーズですが、平行リンクのロボットかと思いきや、第3軸に工夫があります。 通常のリンク付きロボットの場合 通常のリンク付きロボットの場合、…

ロボットの機構(5)~パレタイズロボット~

パレタイズロボットとは 物流で使われるパレット。そのパレットに箱や袋を積み上げることをパレタイズと言います。 逆に、パレットに積まれてきた箱や袋を降ろすことをデパレタイズと言います。そのパレタイズ・デパレタイズ作業に使われる専用ロボットをパ…

本ブログでのロボット模式図について

ロボットの模式図 本ブログでは、このような模式図でロボットの機構を説明します。 関節の名称 本ブログでは、根元から第1軸、第2軸・・・と呼んでいます。 参考:産業用ロボットはどんな構造?ロボットアームが動く仕組みを徹底解説 | XYZ | 川崎重工業株…

ロボットの機構(4)~平行リンク機構を使ったロボットの紹介~

平行リンク機構を使ったロボット 先日の記事で平行リンク機構について説明しました。 fa-robot-watch.com平行リンク機構を使ったロボットでも、いくつかのバリエーションがあります。 第2軸の横に第3軸駆動部が配置されているパターン 下記の図のように、…

ロボットの機構(3)~ばね要素~

前記事のカウンターウエイトの最後に書きましたが、第2軸の動力補助はばね要素を使うことが多いです。 今回は、ばね要素を使ったロボットの機構について説明していきます。 理屈としては簡単で、重力による負荷を軽減するように、ばねの力で助けてやるとい…

ロボットの機構(2)~カウンターウエイト~

今回は、ロボットについている大きな「オモリ」の話です。 FANUCの大型ロボット カウンターウエイトの原理 具体的にどう使うか 第3軸に使う 平行リンクと組み合わせて第3軸に使う 第2軸に使う FANUCの大型ロボット 前回の記事でも登場しましたが、FANUCの…

ロボットの機構(1)~平行リンク機構~

平行リンクと言ってもパラレルリンクロボットのことではありません。*1 垂直多関節ロボットの中でも、大型ロボットについている棒(リンク)について解説していきます。大学でロボティクスを学んだ人にとっては当たり前のことかと思いますが、つらつらと説明…

機械エンジニアの「生涯勉強」とソフトウエア分野の「生涯勉強」は少し違うんじゃないかと思う

※今回の記事は、あくまで機械設計者という1つの立場から書いたものなので、生暖かく受け取ってください。 生涯勉強 エンジニアは生涯勉強だと思っています。 会社勤めしていた時から、技術書は惜しげなく買い、勉強するようにしていました。また、メカ分野に…