KUKAから大型ロボットの新しいラインナップが発表されました。
可搬重量 800 kgのKR FORTEC ultra重可搬ロボット | KUKA AG
まだ発表されてから日が浅い*1こともあり、一般公開されている情報が少ないのですが、検索したところ下記のような記事が見つかりました。
参考記事1: Kuka launches new range of Fortec industrial robotic arms
参考記事2: KUKA with new KR FORTEC - ideal for electromobility
写真や記事から分かるこのロボットの特徴をまとめたいと思います。
第2関節、第3関節が両持ちで高慣性(イナーシャ)ワークの高速ハンドリングに対応
なんといっても見た目で目を引くのがダブルになっている下側アームで、第2関節、第3関節が両持ちになっています。*2
ただし、平行リンク機構などを採用しているわけではなく、単純に棒が2本になっているだけですので、モータや減速機の負荷が軽減されるということはありません。
小型ロボットでは、第2、第3関節が両持ち構造になっているのは珍しくないですが、この可搬重量で両持ちというのは珍しいです。*3
得られる効果としては、片持ちと比較してアームの剛性がアップするため、高速動作や大きなイナーシャのワークを持った時に有利になると考えられます。
逆に言うと、片持ちで同じ剛性を実現しようとした時よりも、ロボット本体が軽量になります。
EV(電気自動車産業)向けを意識
参考記事2つ目のタイトルにもあるように、EV(電気自動車)業界向けを強く意識した商品展開のようです。
下記の動画はTESLAが公開している工場ツアーの動画ですが、FANUCの大型ロボットが使われていることが分かります。
エンジンがついていない状態の自動車のボディは、いうなれば大きな箱ですので、重量のわりにイナーシャが大きいという特徴があります。
そのため、それをハンドリングするロボットはそのイナーシャに負けない剛性が求められます。*4
そのニーズにこたえるための両持ち構造と言えます。
また、TESLAと言えば、ギガプレスという巨大な鋳造工法で、従来の自動車製造の溶接工程を置き換えることで生産効率を向上させていることがよく話題になります。その巨大なワークのハンドリングに使用できるロボットということで、EV向けを謳っている側面もありそうです。
今まで自動車工場のロボットというと、スポット溶接をする多数のロボットが主役というイメージですが、EV工場では、巨大なロボットが巨大な部品をレゴブロックのように組み立てていくのが主な工程というように、少し風景が違うのかもしれません。
まとめ
今まで自動車産業は、ロボットを使用した自動化のけん引役でした。
EVになっても、それは変わらないと思いますが、TESLAをはじめとするEVメーカーは、今までの自動車メーカとは違う発想での自動化・効率化を進めていくように感じます。
そのため、それに応える形で、今までとは少し方向性が異なるロボットが登場してくるのではないでしょうか。
2023/04/12追記
このような記事を見つけました。
テスラのテキサス工場にサイバートラック製造用のロボットが66基到着!さらにはテスラ各工場で生産能力が大幅に向上し、受注残がどんどん減少 - Life in the FAST LANE.
TESLAはKUKAのロボットを多く採用しているのかもしれません。
そうだとすると、大量一括導入のお得意様だということで、TESLAがKUKAに対してロボットの開発を要請したという裏事情もありそうです。