FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

ロボットの機構(6)~てこの原理を活用したロボット~

今回は、機構で特色のあるロボットを紹介します。


MX700N | 川崎重工の産業用ロボットより引用

川崎重工のMシリーズですが、平行リンクのロボットかと思いきや、第3軸に工夫があります。

通常のリンク付きロボットの場合

通常のリンク付きロボットの場合、下の図のように、第3軸を駆動するL2とL3は同じ長さです。

そのため、仮に

  • 負荷:100kg
  • L1=1m
  • L2=L3=0.5m
  • 重力加速度:10で近似

とすると、この姿勢で静止している場合、第3軸にかかるトルクは100kg×1m×10 = 1000Nmとなります。
(L2側で計算すると、200kg×0.5m×10=1000Nm)

川崎重工Mシリーズの場合

ですが、このMシリーズは、L2に対してL3を短く設計してあります。*1

先ほどと同様、

  • 負荷:100kg
  • L1=1m
  • L2=0.5m
  • L3=0.25m
  • 重力加速度:10で近似

とすると、第3軸にかかるトルクは100kg×1m×10×(0.25/0.5)= 500Nmとなります。

シンプルにてこの原理を使って第3軸の負荷を軽減しているわけですね!*2

なお、こちらの川崎重工のページで詳しい説明があります。
特許 第3614383号 ロボット | 第163号 ロボット特集号 | 川崎重工業株式会社


この機体をはじめ、川崎重工はメカ的に工夫を凝らしたロボットが多く、見ていて楽しいです。
今後も紹介していきたいと思います。

*1:実際は上下が等辺の4節リンクの下にサブリンクがついている構造ですが、力学的な考え方は同じです

*2:ただし、動作範囲では損をします