ロボットにも得意な向き、不得意な向きがあるという話です。
「右利き、左利き」は本記事で勝手に呼んでいます。
左右対称のアプリケーション
突然ですが、自動車ボディのスポット溶接を考えてみましょう。
このように、右と左から同じようにワークに対してアプローチすることになります。
(ロボットは手首部分のみ表示しています)
(自動車?というツッコミはなしでお願いします)
片側だけ適用検討して、もう片方は対称だから省略!(下図)
設備を製作して実際のティーチングで反対側をやろうとすると・・・
ぶつかってる!(下図)
自分が検討した設備で、干渉してるぞ!となったら生きた心地がしませんね。
手首が左右非対称
原因は、ロボットが左右対称ではないことです。
特に手首部分の左右寸法の違いに気を付ける必要があります。
下記の図の寸法A, Bの違いです(図ではちょっと大げさに書いていますが)
そんなに差があるものなの?と思いかもしれませんので、
スポット溶接のロボットの仕様書を見て、ロボットの手首部分の寸法を確認してみましょう。
例1・不二越のSRA100H
不二越 / ケーブル内蔵型スポット溶接ロボット SRA100H/SRA133HL
A=177mm
B=165mm
と、12mm違います。
例2:川崎重工のBX100N
BX100N | 川崎重工の産業用ロボット
A=158mm
B=187mm
と、19mm違います。
大型ロボットは特になのですが、ロボットアームが左右非対称というのはよくあります。
もしも、片方の検討でギリギリを攻めていると、もう片方で干渉するかもしれません。
第4軸をひっくり返せば?
じゃあ第4軸を回しておいて、ひっくり返して使えば?と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。
上記の例で出したSRA100H, BX100Nの第4軸の動作範囲は±210度です。
180度ひっくり返した状態を基準にすると、30度、390度になってしまいます。
これでは、かなり動きに制約が出てしまい、取りたい姿勢が取れないかもしれません。
左右に気をつけないといけないロボットの特徴
まとめておきます。
手首形状(干渉範囲)が左右非対称
まずは、外観図から手首の左右の寸法がどうなっているか確認しましょう。
スポット溶接用やアーク溶接用など、手首内にケーブルを通せる構造のロボットは間違いなく左右寸法が違うので要注意です。
第4軸の動作範囲が狭い(±180度程度)
第4軸の動作範囲が片側180度プラスアルファくらいしかない場合、ロボット手首をひっくり返して使うのはほぼ無理と考えた方がいいでしょう。
これも手首内にケーブルを通せる構造のロボットで当てはまることが多いのです。(第4軸に通っているケーブルの都合と思われます)
逆に、第4軸の動作範囲に余裕があれば、180度ひっくり返しても動作できる範囲が広く残っているため、左右の問題が出にくい傾向があります。
例えば第4軸の動作範囲が±360度の場合は、180度回した位置を基準とすると180度~-540度の動作範囲を使えます。
ただし、片側が180度に減ってしまうことに変わりはないため、手首が複雑な動きをすると動作範囲が足りなくなる可能性はあります。
構想・適用検討の段階で何とかしよう
このような勝手違いに起因する不具合が現場(ティーチング時)に発覚するのは最悪です。
構想設計、適用検討の段階で見つけ出して潰しておきましょう。
とにかくこの記事の結論は1つです。
「左右対称だから机上検討は片側だけ」は厳禁!