今回は産業用ロボットに関する基本知識として、可搬重量とリーチについて説明してきます。
産業用ロボットの仕様でまずチェックする項目ですね。
可搬重量について
ロボットの可搬重量は、「ロボットの手先先端フランジに取り付けて動作させることができる重量」のことです。
ハンドリングをするロボットであれば、ロボットハンドとワークの重量両方を合わせた重量になります。
産業用ロボットのメーカは、ハンドなしの状態で販売するのが普通のため、「何kgのワークを運べます!」とは言えません。
可搬重量をハンドとワークで分け合うことになるので、軽いハンドであれば重いワークが運べますし、複雑な重いハンドであればワークに割り振れる可搬重量が小さくなります。
また、重量だけではなく、手先で搬送するものの重心・イナーシャも確認が必要です。
ロボットの仕様書には、下記のような手先負荷と重心の許容値が記載されています。
3Dでハンドを設計し、重心とイナーシャ計算までやれば、スペック通りの可搬重量を実現することは可能ですが、ロボット選定の様子を見ているとハンド+ワークにさらに余裕を見た可搬重量のロボットを選ぶケースが多いです。
- ロボット選定の時点でハンドの詳細が決まっていない
- めいっぱい可搬重量を使い切ってしまうと、動作が遅くなるかもしれない
- 将来の設備変更のことを考慮して
といった事情により、ある程度の余裕を見て選定しているのだと思います。
リーチについて
次はリーチについてです。
ロボットの基本仕様書で、下記のような図をよく見ます
一見、ロボットの一番先端部分が到達できる範囲なのかと思うかもしれませんが、そうではありません。
このような動作範囲図は、下記のようなアームの上の点を基準として描かれています。
JISでは、「手首基準点」として定義されており、手首を構成する軸の、根元側に1番近い軸と、2番目に近い軸の回転軸の交点です。*1
通常の6軸垂直多関節ロボットで、根元から第1軸、第2軸と数えていった場合は、第4軸と第5軸の回転軸の交点になります。
6軸ロボットの場合、この手首基準点を基点として、手首の3自由度(姿勢の3自由度)が使えます。
メーカによって呼称は違いますが*2、いずれもこの手首基準点を用いています。
ただし、協働ロボットでは若干例外もあり、そのことについては過去記事でまとめています。
fa-robot-watch.com
実際のロボットシステムでは、手首先端の長さがある+ツールが付くため、本当のリーチはさらに長くなることになります。
逆に言うと、届いてしまう範囲も広がることになるため、安全柵などの設計などでは注意が必要です。