「溶接ロボット」と一言で言っても、大きく2つに方向性が分かれます。
それぞれどのような特徴を持っているか、重視される性能は何かなど、まとめてみました。
アーク溶接とは
ロボットでアーク溶接と言うと、半自動アーク溶接のことを指します。
連続的に供給されるワイヤーを母材に溶かし込みながら、金属をくっつける溶接です。
アーク溶接の種類と原理 | アーク溶接 | 溶接革命 | キーエンス
一般的にイメージされる「溶接」はこれではないでしょうか?
ロボットの特徴
アーク溶接用のロボットは、下記のような特徴があります。
- 可搬重量:10~20kgくらいと小さめ(アークトーチが軽量のため)
- 手首の構造:専用ロボットは、手首部分が中空構造になっていることが多い(ワイヤー・ガスの供給チューブを通すため)
- アームの長さ:可搬重量の割には長めのことが多い。
- 使われ方:中小~大企業まで幅広く、台数は1台から使われる
- 重視される性能:連続的に線で溶接をしていくので、軌跡精度が重要
有名なメーカ
アーク溶接用ロボットに力を入れているメーカとしては、ダイヘン、パナソニックが有名だと思います。
ダイヘン、パナソニックともに、アーク溶接機自体も販売しているので、ロボットと溶接機の連携がし易く、高品質な溶接が実現できます。
DAIHENのFD-B15
https://www.daihen.co.jp/products/robot/robot/fd-b15.htmlより引用
スポット溶接とは
抵抗溶接と呼ばれるもので、溶接ガンと呼ばれるものについている電極で、2枚の板を挟んで、大電流を流すことで母材のみを溶かしてくっつけます。
別途、溶かしこむための材を供給するということはありません。点で金属同士がくっつくことになります。
自動車のボディを製造する工程が有名ですね。
厚みのある金属には不向きという弱点があります。
有名なメーカ
各社スポット溶接用ロボットを出していますが、特に有名なのは川崎重工と不二越だと思います。
不二越のSRA166-01A
不二越 / 世界と差をつけるスピード スポット溶接ロボット SRA166/210-01Aより引用
ロボットの特徴
スポット溶接用のロボットは、下記のような特徴があります。
- 可搬重量:100~200kgくらいと大き目(溶接ガンが重いため)
- 手首の構造:専用ロボットは、手首部分が中空構造になっていることが多い(冷却水のチューブやケーブルを通すため)
- アームの長さ:狭い場所で密集配置するため、様々な長さが用意されている
- 使われる場所:自動車工場などでラインを構成して多数で使用されることが多い
- 重視される性能:多数の点で溶接をしていくので、位置決め精度と、点と点の間の移動速度(短ピッチ性能)が重要
スポット溶接ロボットのアーム長さが様々なことについては、下記の記事でも触れています。
fa-robot-watch.com
まとめ
"溶接用ロボット"と言っても、どの溶接に特化しているかによって、求められる性能が異なることが分かります。
(溶接自体にいろいろな手法があることの反映でもあります)
溶接は危険な作業でもあり、また、熟練するまで時間がかかる作業でもあり、自動化のニーズは大きいです。
それぞれのニーズに応える中で、このようにロボットが分化して進化してくのは面白いですね!
これ以外にもレーザー溶接やシーム溶接などがありますが、それはまた別の機会に