前記事のカウンターウエイトの最後に書きましたが、第2軸の動力補助はばね要素を使うことが多いです。
今回は、ばね要素を使ったロボットの機構について説明していきます。
理屈としては簡単で、重力による負荷を軽減するように、ばねの力で助けてやるというものです。
- ばねの配置パターン1(根本配置)
- ばねの配置パターン2(側方配置・引張ばね)
- ばねの配置パターン3(側方配置・圧縮ばね)
- ばね要素の種類
- ばねの配置パターンのメリット・デメリットと実例
- 各社の好み
- まとめ
ばねの配置パターン1(根本配置)
1つ目は、アームの根本にばねを配置するというものです。
今回も軸が1つだけのロボットに登場してもらいましょう。実際はロボットの第2軸だと思ってください。
(※本ブログで使用している用語や図示法についてはこちら:https://fasumi.hatenablog.com/entry/2022/11/14/152021)
アームが前方に倒れたとき
アームが後方に倒れたとき
それぞれ、ばねの力でアームが起き上がるのを補助します。
ばねの配置パターン2(側方配置・引張ばね)
2つ目は、アームの側方に配置し、引張ばねを使用するものです。*1
アームが前方に倒れたとき
アームが後方に倒れたとき
これも同じく、それぞれ、ばねの力でアームが起き上がるのを補助します。
ばねの配置パターン3(側方配置・圧縮ばね)
3つ目は、やはりアームの側方に配置するのですが、圧縮ばねを使用するものとです。
アームが前方に倒れたとき
アームが後方に倒れたとき
パターン2の引張ばねを使う時と異なり、ばねの地面側の支点が、軸の下側にあります。
ばね要素の種類
機械式ばねか、ガススプリングが使われます。
機械式ばねは、メンテナンスフリーですが、重く・大きくなりがちです。
ガススプリングは、軽量でサイズもコンパクトですが、定期的にガスの圧力をチェックしガスを足す必要があります。
ばねの配置パターンのメリット・デメリットと実例
では、各配置のパターンのメリット・デメリットと、実際のロボットを見てみましょう。
パターン1(根本配置)
パターン1のメリットは、ロボットアームの横幅を小さくすることができることです。
その代わり、後方にばねのシリンダーが出っ張ることになります。
FANUCのR-2000iD です。後方にシリンダが出っ張っているのがわかると思います。
パターン2(側方配置・引張ばね)
パターン2のメリットは、ロボットの腰回り(特に後方)をスリムにすることができることです。その反面、アームの横につけるため、幅は大きくなります。
左右1本ずつ配置することが多いので、なおさらです。
川崎重工のMX700Nです。 左右に大きなスプリングを付けているのがわかると思います。*2
パターン3(側方配置・圧縮ばね)
ガススプリングの圧縮式を使う場合、パターン3の配置をとることが多いようです。
メリット・デメリットはパターン2と同じですが、ガススプリングは機械式ばねと比較してコンパクトなので、サイズ的なデメリットは小さくなります。
川崎重工のパレタイズロボットCP180です。第2軸のモータの上ではなく、リンク機構との組み合わせで、リンク側にばねを配置しています。
各社の好み
FANUCや安川は機械式、 KUKAはガススプリングを主に使っているように見えます。
川崎重工・不二越は、機械式・ガススプリング両方を使い分けているようです。*3
DENSOやヤマハ、EPSONなどのような、小型機種メインで展開している会社はスプリング付きのロボットはありません。
KUKAのKR 600です。根元にシリンダと補助タンク?から構成されたガススプリングが使われています。
まとめ
今回はばね要素について説明しました。
ロボット展示会など行った際、各社がどのようにばねを配置しているか?に着目して回るのも楽しいかもしれません。
前回記事はこちら。
fasumi.hatenablog.com