FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

ロボットの機構(15) ~不二越のMC1000DLとオリムベクスタのOVR480K5Nの類似性

サイズが全然違うのに、似たような思想で設計されているロボットがあり、面白いと思ったので紹介します。

不二越(NACHI)のMC1000DL

1つ目はこちら、不二越の大型ロボットMC1000DLです。*1


MC1000DLより画像引用

可搬重量1000kg, 自重9000kgという大型のロボットです。

動画が見つからなかったので、同じ構造のSC700DLの動画を紹介(結構古い動画ですね)

自動車のボディー・エンジンなどを搬送する用途のロボットです。

オリムベクスタ(オリエンタルモータ)のOVR480K5N、OVR680K5N、OVR880K5N

2つ目のロボットはこちら、オリムベクスタの4軸ロボットです。


オリムベクスタ製 4軸垂直多関節ロボットアーム|オリムベクスタより画像引用

可搬重量5kg, 自重は16.5kg~26.9kgとかわいらしいロボットです。
動画では、左側で動いているロボットです。
基本構造は4軸ロボットですが、手首フリップ軸として、追加の1軸を手先に追加することができます。
(動画の1分13秒付近)

何が似ているか?

2つのロボットの模式図を見てみましょう。

不二越のMC1000DLの模式図
オリムベクスタの4軸ロボットの模式図

どうでしょうか?なんとな~く似ていないでしょうか。
実はどちらも4軸の平行リンク機構ロボットをベースにしているのです。

4軸平行リンクロボットの模式図

4軸の平行リンクロボットは、パレタイズロボットでよく採用される構造です。
ワークを反転する必要がないため、手首の自由度がヨー(水平回転)のみになっています。
機構的に手首が水平に保たれ、力学的な利点もあるのですが、自由度が少ないためワーク姿勢の微調整ができず、用途が制限されます。
詳しくは過去記事もご覧ください。
fa-robot-watch.com

ここで紹介した2つのロボットは、
平行リンク機構で、手首の水平を機構的に保持し、力学的な利点も得た上で、手首の自由度を追加するという思想で設計されています。
(オリムベクスタの方は5軸、不二越の方は6軸と言うことで、1軸違いますが)

可搬重量で比べると1000kgと5kgと実に200倍も違いますが、同じような考えで設計された結果、同じような形状になったというわけです。
生物の収斂進化のようで興味深いと感じたので紹介いたしました。

*1:カタログには載っていますが、日本語版ホームページには記載がありません。SC700DLという同じ構造のロボットはホームページ記載ありです