FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

2023国際ロボット展を見ての感想

2023国際ロボット展を見学してきましたので、感想を残しておきたいと思います。
※写真が少ないですがご了承ください。(写真は一言許可を得て撮影しています)

一番印象に残ったMujinに関しては別記事でまとめているのでご覧ください。
fa-robot-watch.com

今年のトレンドは?

ロボット業界に関わるようになってから、毎回ロボット展は見るようにしていますが、その時々の流行りというものがあります。
例えば、双腕ロボット(2015年ころ?)、ビッグデータ・AI・深層学習(2019年ころ?)など。
ただ今回は「どこも○○を展示してるな~」というものはなく、ソフトウエアと組み合わせて具体的に何に使えるかという部分を押し出した展示が多かったように思います。
ハードウエアで

EVバッテリの搬送

安川電機が参考出展で1000kg可搬のスカラロボットを出していました。
FANUCの1000kg可搬ロボットはすでにリリース済みで、EV産業でのバッテリーのハンドリングなどを主な用途としています。
安川電機も1000kg可搬対応可能だということを示し*1、EV分野での存在感が薄くならないようにとの意図だと思います。

ただ、ロボットが大きいのでそれなりの展示スペースはありましたが、それほど力を入れてPRしているようには見えませんでした。
出してみて反応をうかがっているというところでしょうか。

FANUCの新型1000kg可搬、500kg可搬ロボット

1000kg可搬は先日リリースされていましたが、さらに新型の500kgを発表していました。
ファナックが500kg可搬ロボット開発、EV需要取り込む|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

Universal Robot社の30kg可搬協働ロボット

少し前の20kg可搬の発売に続いて、今回は30kg可搬の協働ロボットを公開していました。
アーム長は可搬重量の割りには短めの1300mmであり、人の可動範囲からあまりかけ離れないスペックを意識しているとのことでした。
世界初公開と言うことでしたが、順当なラインナップの拡充という感じでそれほど大きな驚きはありません。

不二越の協働ロボット、DAIHENの協働ロボット

不二越は、通常の産業用ロボットMZシリーズと部品を共通化した協働ロボットを展示していました。
協働ロボットらしくない見た目が特徴です。
[特集 2023国際ロボット展vol.6]協働ロボットでも高速、高精度を/不二越 越野敦 部長|産業用ロボットに特化したウェブマガジン
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/news/pre/230825.html

DAIHENは溶接に特化した協働ロボットを展示していました。
協働×溶接というと安全性は?と思うかもしれませんが、あえてその分野に切り込んでいっています。*2
ニュースリリース・お知らせ | 株式会社ダイヘン

どちらも協働ロボットでは後発になりますが、それぞれ尖った商品戦略で巻き返しを図っているように見えます。

Epsonの面白い展示


前回のロボット展でもオタマトーンを使った展示をしていましたが、今回は黒ひげ危機一髪を使った展示をしていました。
ロボット展は一般の見学者も多いため、見て触って楽しめることを意識した展示をしていると思います。

全体を見てみて

いたるところにFANUCのCRX

いたるところでFANUCのCRXがありましたが、おそらくFANUCから各社ブースに貸与・提供されていたのではないかと思います。
以前北米のIMTSという展示会を見学したことがあるのですが、その際もFANUCの協働ロボットがいたるところに置いてありました。
(その時点では緑の協働ロボットでしたが)
売れているという印象を与えるための大胆な戦略はさすがFANUCと感じます。

一般の方も多い展示会

毎度のことですが、子供連れの方も多く一般の参加者の比率がかなり高い展示会だと感じます。
また、就職活動の一環かな?と思われる学生さんも多く見かけました。

まとめ

全体的に冷めた文章で申し訳ありません。
何回も見ているので、だんだん驚きというか新鮮味が薄れてきているような気もします。
メカ屋なので新機種ドーンというような展示にはテンションが上がりますが、そういう展示は年々減ってきています。
昨今、ロボット市場の成熟に伴い、ハードウエアの性能(可搬重量が大きい、動作速度が速い)だけではアピールポイントにならなくなってきています。
冒頭でも述べましたが、どの会社も「どう使えるか?」をお客さんにイメージさせるような展示に注力しているように感じます。
ですが、展示会の短い時間の中で、ニーズとシーズがマッチするような出会いをするのは、来場者側にとっても出展者側にとっても結構難しいことなのではないかと思います。

*1:変化球ではありますが

*2:そもそもDAIHENは溶接ロボットが強いという事情はあるのですが。協働ロボットを自社開発したのは意外でした