FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

ロボットが外力や干渉を検知する方法

今回は、ロボットが外力を受けた場合や、他物体との干渉による反力を検知する方法についてまとめていきたいと思います。
外力と干渉は異なりますが、この記事ではあまり区別せずに使っています。

外力を検知する目的

ロボットが外力を検知したい目的は、主に3つあります。

  1. 人間に危害を加えないため
  2. 特定のタスクをこなすため
  3. ロボット自身が破損しないため

1番目はロボットが人と接触したときを想定しています。主に協働ロボットに搭載されている機能です。

2番目はワーク形状に倣ってのバリ取り・研磨など、力をフィードバックしてロボットの動作を制御するものです。

3番目は「ロボットが他の設備と干渉しているのに動き続けて故障する」といった状況を防ぐためのものです。一般的な産業用ロボットでも搭載されていることが多い機能です。

1番目、2番目、3番目の順に、高い検知精度や応答性、信頼性が求められます。*1

電流による検知

電流による検知のイメージ

コスト:安い
精度:低い
応答性:悪い

ロボットの姿勢や動作速度から正常な電流値を計算し、その値からかけ離れていたら外力がかかっていると判定するものです。
電流による検知は、温度や摩擦などによる影響が大きく精度が悪い*2というデメリットがあります。
しかし、ロボットのコントローラが読み取る電流値に対してリミッターをかければよく、特別な装置が必要ないので、機能実装のハードルが低いというメリットがあります。
ロボットのメカ的破損防止や回路の異常発熱による破損などを防ぐ目的ではそれほどの検知精度は必要ないため、電流値による外力検出が有効です。
そのため、上記の「3.ロボット自身が破損しないため」の機能として、多くのロボットで搭載されています。

手先の力覚センサによる検知

手先のセンサによる検知のイメージ

コスト:高い
精度:高い(ただし、ツール部への負荷のみ検知)
応答性:良い

手先に力覚センサを付けるタイプです。
この方法は、「2.特定のタスクをこなすため」に用いられます。
ツールとロボットのツールフランジの間に力覚センサを取り付けるため、外乱がほとんど無く、高い精度で検知ができます。
逆に、ツール以外の部位が他の物体と干渉した場合は検知できないので、1や3の目的では使用できません。

このような使われ方をするセンサとしては、ワコーテックの6軸力覚センサDynPickや、新東工業のZXYer、海外メーカーだとATIのセンサなどが有名です。
力センサ・力覚センサのワコーテック
6軸力覚センサ ZYXer(ジクサー) |新東工業株式会社

少し前に、3M(研磨剤メーカー)がロボットによる研磨ラボを開設したというニュースもありました。
研磨工程のロボット化をサポートする3M™ 研磨材ソリューション|金属加工に従事されるお客様向け製品|3M 日本

具体的なアプリケーションとしては、研磨やバリ取りなど、力を制御しながらの加工が多いようです。

各関節の力覚センサによる検知

各関節のセンサによる検知のイメージ

コスト:高い
精度:高い
応答性:良い

各関節に力覚センサを取り付けるタイプは、「1.人間に危害を加えない」目的で、多くの協働ロボットで採用されています。
ロボット自身の重量・姿勢から正常な負荷を計算し、それと実際の負荷の差が大きい場合に干渉していると判定するため、どうしても計算誤差が発生します。

Universal Robotをはじめ、各社の協働ロボットの多くはこの方式を採用しています。

このタイプのセンサで「2.特定のタスクをこなす」目的の外力検知も可能ですが、ツールにかかる外力を直接測定しているわけではないので、どうしても精度面では不利になります。

センサ搭載カバー(ジャケット、スキン)による検知

コスト:高い
精度:高い
応答性:良い

ロボットにセンサ機能のあるカバーを取付、外力との干渉を検知するものです。
これも「1.人間に危害を加えないため」に用いられます。
1つ前の関節部のセンサ方式と違い、接触したことを直接検出するため、原理的に計算誤差がなく、軽い力でも検出できます。
ただ、ロボットに合わせた形状で準備する必要がある*3ため、ロボットメーカーから純正品が提供されていない場合、使用するハードルが高くなります。

ロボットメーカーの純正オプションとしては、DENSOのCOBOTTA PROや川崎重工のものが見つかりました。
www.denso-wave.com
kawasakirobotics.com

また、独立した要素部品としてこういったカバーを開発しているメーカーとして、三重ロボット外装技術研究所がありました。
YaWaRaKaロボD - 三重ロボット外装技術研究所YaWaRaKaロボD - 三重ロボット外装技術研究所

記者もやってみた! 触れた瞬間「ピタッ」と止まるロボット用安全カバー【前編】/三重ロボット外装技術研究所|産業用ロボットに特化したウェブマガジン
記者もやってみた! 触れた瞬間「ピタッ」と止まるロボット用安全カバー【後編】/三重ロボット外装技術研究所|産業用ロボットに特化したウェブマガジン

まとめ

今回はロボットが外力・他物体との干渉を検知する方法についてまとめてみました。
センサの配置方法も含め、意外にバリエーションがありますが、それぞれの目的に応じたロボット・センサを選択することが大切です。

*1:筆者の意見です

*2:閾値を大きくとる必要がある

*3:カバーのすき間部では検知できない