2025年のISO10218シリーズ改訂を受け、タイトルや内容を修正しました(2025年3月)
なお、本記事ではHand-guided control: HGCの要件など、技術的側面には触れていません。
ハンドガイド(Hand-guided control: HGC)やダイレクトティーチなど、「人がアームをもって動かす使い方」の用語について、整理してみたいと思います。
先にまとめ
記事を書いていたらかなり長くなってしまったので、先に結論を述べます。
ハンドガイド(Hand-guided control: HGC)
ISO10218-1,-2:2025を参照すると、「ハンドガイドとはこういうものだ」と明記はされていないものの、
「作業者がロボットの手先付近に設けられたハンドル等を握って操作することで、ロボットに実作業(タスク)をさせるような使用方法」だと言うことが読み取れます。
ダイレクトティーチ(ダイレクトティーチング)
ISO10218-1,-2:2025にはダイレクトティーチと言う言葉は登場しません。
代わりに、ISO 10218-1:2025の3.1.4.3 teach内に、「ハンドガイドを使ってロボットを教示点に移動させるような教示方法は、lead-through teachingと呼ぶことができる*1」と記載されています。
実際の使い分けは(国内では)
本格的な調査をしたわけではありませんが、国内ではだいたい下記のような使い分けになっているようです。
- ハンドガイド=ロボットのエンドエフェクタに取り付けられたデバイスを持ってロボットを操作し、実際のタスクを実施する(重量物の搬送など)
- ダイレクトティーチ=人間が手でロボットの姿勢を変更し、教示をする
ダイレクトティーチは、lead-through teachingの和製英語だと思えば、それほど混乱なく使い分けできています。*2
実際の使い分けは(英語情報では)
hand guiding*3で、実作業を意味する場合と教示を意味する場合の両方があります。
teaching(programing) by hand-guidance(教示)や、hand-guidance for tasks(実作業)と、語句を付け足して使い分けている場合もあり、これならば誤解が無いでしょう。
これはISO10218シリーズ2025での内容に近い使い方になっています*4。
Direct teachingと言う用語は一般的ではなく、日系ロボットメーカの英語情報で一部見られるのみです。
lead-through programmingを使っている例もありましたが、こちらもあまり広く普及はしていないように感じます。
まとめ
日本語では、ハンドガイド・ダイレクトティーチという呼称で問題ないでしょう*5。
(ただ、話していて会話がかみ合わないなと感じた際は、どの意味合いで使っているか確認した方がいいかと思います)
英語で説明などをする場合は、
- ハンドガイド・・・hand-guidance for tasks
- ダイレクトティーチ・・・teaching by hand-guidance
というように置き換えて話せば、スムーズに伝わるのではないかと思います。
各メーカの呼称(国内)を確認
では、ロボットメーカーがどう呼んでいるか確認してみましょう。
安川電機
ハンドガイド
重量物を搬送するための使用形態として、ハンドガイドを紹介しています。
ダイレクトティーチ
教示の手法の1つとしてダイレクトティーチングがある、と紹介されています。
産業用ロボットの導入とティーチング | 産業用ロボット | 製品・ソリューション | 安川電機
人協働ロボットであればダイレクトティーチングでアームを直接握ってポイントを覚えさせることでプログラムの生成ができます。
~上記サイトから引用 ~
FANUC
ハンドガイド
こちらも、重量物を搬送するための使用形態として、ハンドガイドを紹介しています。
~https://www.fanuc.co.jp/ja/product/catalog/pdf/robot/RCR-35iA%28J%29-02c.pdfより画像引用~
ダイレクトティーチ
安川電機同様、ダイレクトティーチングという用語を使っています。
協働ロボットCRX - ファナックの産業用ロボット
アームを直接持って動かすダイレクトティーチで、簡単に操作ができます。
~上記サイトから引用 。一部省略~
DENSO
ダイレクトティーチ
誰もが使いやすいティーチング|製品情報|COBOTTA PRO|デンソーウェーブ
直感的に短時間で教示できるダイレクトティーチングの良さを活かすため、
~上記サイトから引用。一部省略~
国内での使い分けのまとめ
先ほど述べたように、
- ハンドガイド=人間が手でロボットを導きながら、実際のタスクを実行する(重量物の搬送など)
- ダイレクトティーチ=人間が手でロボットを導きながら、教示をする
という使い分けになっていると思われます。
世の中の例(英語)を見ていくと
では英語での例を見てみましょう。
KUKA
教示に使うデバイスの紹介で「Hand guiding」という用語を使用しています。
Programming robots: hand guiding with KUKA ready2_pilot | KUKA AG
ABB
ABBの技術ブログ内ではありますが、「lead-through programming」という語句を使っています。
Pros and Cons: Lead-Through Programming - Carolina Motion Controls, Inc.
YASKAWA
見出しに「Direct Teaching」とありますが、補足的に「Hand-Guided Collaborative Teaching」と記載しています。
Robot Programming Products - Teach Pendants, Software and Direct Teaching
FANUC
実作業のためのhand guidanceと、教示の手法としてのhand guidanceと、両方があります。
https://www.fanuc.eu/ua/en/robots/accessories/hand-guidance
不二越
教示の手法(オプション)として「Direct teaching」と記載。*6
NACHI Robot Option : Direct teaching
英語情報のまとめ
このように、「ダイレクトティーチ」を使っているのは日本のメーカに限られ、teaching robot with hand guidingというような呼称がよく使われている印象です。
「Robot direct teaching」とGoogle 検索しても、あまりロボットメーカーの情報は少なく、論文などが多く出てくるため、英語圏のFA業界ではDirect teach(ing)の呼称が一般的ではないのかもしれません。
以前の記事は
以前の内容は下記のリンクから見ることができます。
https://web.archive.org/web/20250120163252/https://fa-robot-watch.com/entry/cobot-hand-guiding-and-direct-teaching