最近のロボット関連のニュースで気になったものをピックアップしていきます。
※メカ中心です。
- 【ミスミ】ロボット導入の支援サービス本格化
- 【FANUC】大型ロボットM-1000のバリエーション追加
- 【FANUC】防爆対応の協働ロボット発表
- 【安川電機】1000kg可搬の大型スカラの販売開始
- 【川崎重工】垂直多関節の協働ロボットをラインナップに追加
- 【不二越】協働ロボット新機種追加
- 【不二越】ぶつかる前に停止するロボット
- 加工用途でのロボット活用
- フォルクスワーゲンの工場閉鎖(EV業界とロボット)
【ミスミ】ロボット導入の支援サービス本格化
MiBOT[ミボット] ロボットパッケージ一覧 | ロボット導入支援サービス | MISUMI(ミスミ)
ミスミがロボットシステムのパッケージ(事例)紹介と、実現可能なSIerへの仲介を行うとのニュースです。
ミスミ、中小企業のロボット導入費15%抑制 運用例を顧客に提示 【イブニングスクープ】 - 日本経済新聞(日経新聞2024年3月21日 )
中小のロボ導入の不安をなくす、支援サービスにミスミが本腰|産業用ロボットに特化したウェブマガジン(robot digest 2024年10月14日)
以前からちらほら情報は聞こえてきていましたが、いよいよ本格的に動き始めました。
過去記事で紹介したように、産業用ロボットを使いたい場合、ロボットメーカーからロボットを購入するだけでは使うことができません。ロボットシステムとして構築する必要があります。
fa-robot-watch.com
ロボットを使う会社が自社でやれればいいですが、多くの場合はシステムインテグレータ(SIer)にお願いすることになるでしょう。
ロボットシステムと一言で言いますが、「どの分野で使用するか」「どのような要素部品を組み合わせるか」などによって必要なノウハウは大きく異なるため、どの領域が得意かというのはSIerごとに異なります。
このような仲介システムによってミスマッチが減らせれば、ユーザ・SIer双方にとって良いことではないかと思います。
【FANUC】大型ロボットM-1000のバリエーション追加
ロボット新商品:大型ハンドリングロボット M-1000/550F-46A - 新商品紹介 - ファナック株式会社(FANUCホームページ 2024年11月)
出荷開始時期は2024年12月とのこと。
今回発表された/550F-46Aは、ベース機種の/1000F-33A*1と比較すると、
- 1000kg可搬から550kg可搬にダウン
した代わりに、アーム長が長くなり、
- リーチが水平方向で3253mmから4601mmに
- 上下ストロークが4297mmから6473mmに
それぞれアップしています。
【FANUC】防爆対応の協働ロボット発表
ファナック、塗装協働ロボで国際防爆規格 | 日刊工業新聞 電子版(日刊工業新聞 2024年6月3日)
ファナックが投入、塗装現場で利用できる世界初の防爆協働ロボット|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(ニュースイッチ 2024年5月11日)
自動車の塗装は自動化が進んでいますが、多品種少量生産の塗装はまだまだ人手に依るところが多いと思います。
需要はあるのではないかと感じますが、実用上はどうなのでしょうか?
完全に一点物であれば手でやってしまった方が早い、となりそうです。
広い平面はロボットで、込み入った箇所は人が、などといった使い分けや、ティーチングの手間が減らせるソフトウエアの充実などがカギになりそうです。
【安川電機】1000kg可搬の大型スカラの販売開始
安川電機、1t可搬質量を持ち低床部へアクセス可能なスカラロボットMOTOMAN-ME1000を販売開始 - 日本経済新聞(日経新聞2024/11/7)
安川電機、重量化するEVバッテリーの車体床面への組込みを支援する1t可搬スカラロボットを販売開始 | IoT NEWS(IoTニュース 2024/11/8)動作図あり
ハンドリング(搬送・組立・検査) MOTOMAN-ME1000 仕様 - 産業用ロボット | 安川電機の製品・技術情報サイト(安川電機ホームページ)
昨年の国際ロボット展2023の時点では参考出展だったはずで、実際に販売するのだろうか?と見ていたのですが、販売開始となりました。*2
FANUCの大型ロボットの充実に対抗する意味合いもあると思います。
本体重量は3250 kgで、1000kg可搬ロボットとしてはだいぶ軽量です*3
その代わりというか、上下ストロークは2000mmで、垂直多関節型と比較すると見劣りします。
【川崎重工】垂直多関節の協働ロボットをラインナップに追加
川崎重工が単腕6軸の協働ロボット投入へ、市場拡大でラインアップ強化:Japan Robot Week 2024 - MONOist(MONOist 2024年09月20日)
川崎重工の協働ロボットは、長らく双腕スカラのDuAroのみでしたが、とうとう垂直多関節型も投入です。
この記事には記載がありませんが、NEURA Robotics(ドイツ)との共同開発です。*4
同じ形状のロボットが以前からNEURAにあるので、事実上はNEURA Roboticsから川崎重工にOEM供給されるような形ではないかと思います。
欧州で情報は先行しており、2023年4月3日にすでに下記のようなリリースがされていました。
New Cobot Series: Kawasaki Robotics introduces CL series – powered by NEURA Robotics - NEURA Robotics(NEURA Roboticsホームページ)
日本での発表が遅れたのは、サポートや販売網の整備といった事情があったのかもしれません。
【不二越】協働ロボット新機種追加
協働ロボットシリーズに12㎏可搬タイプを追加/不二越|産業用ロボットに特化したウェブマガジン(robot digest 2024年8月8日)
昨年リリースしたCMZ05のシリーズ機として、リーチ・可搬重量をアップさせたCMZ12を発売しました。不二越は、いわゆるURタイプ*5ではなく、産ロボに近い設計の協働ロボットを展開をしていくのではないかと思われます。
【不二越】ぶつかる前に停止するロボット
接触前に接近を検知、「ぶつからない協働ロボット」を発売/不二越|産業用ロボットに特化したウェブマガジン(robot digest 2024年11月4日)
ベース部分にセンサーを備え、人が近づいたら減速・停止するというものです。
通常であれば、協働ロボットを用いたシステムをセットアップする際、センサを別途用意して接続・設定する必要がありますが、その手間を省くことができます。
加工用途でのロボット活用
最近、垂直多関節ロボットで切削加工をする・そのためのロボットという記事をいくつか見ました。
FSW対応で切削にも使える高剛性ロボットを発売/安川電機|産業用ロボットに特化したウェブマガジン(robot digest 2024年10月14日)
切削加工用ロボットシステムの市場拡大へ、「ロボット加工技術研究会」発足|産業用ロボットに特化したウェブマガジン(robot digest 2024年7月19日)
https://robotaward.jp/winning/prize/pdf/RobotAward_GB_2024_1.pdf(第11回 ロボット大賞 経済産業大臣賞 ファナック 高精度本格加工ロボットM-800)
ロボットでの切削加工は以前からあったのですが、国内のロボットメーカはあまり採用されず、KUKAなど欧州のロボットが採用されていた印象です。
神戸の中小企業が「KUKA」の産業ロボットで切削加工をリードするまで|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(ニュースイッチ 2020年05月06日)
元々の傾向として、KUKAやABBなどはアームの剛性高め、国内メーカーは軽量でスピード重視だったことが一因だったと思います。
が、国内メーカも加工を意識した高剛性のアームを販売し始めたことで、これからは国内メーカのロボットも選択肢に入ってくると思います。*6
フォルクスワーゲンの工場閉鎖(EV業界とロボット)
直接ロボットのニュースではないですが、関連ニュースということで。
電気自動車の世界販売が失速 もう主役にはなり得ない? 混迷深まる株式市場 押さえておきたいトレンド&リスク(6) - 日本経済新聞(日本経済新聞 2024年8月16日)
VWは国内工場閉鎖検討…欧州EV不振で見直し急務、日系メーカーは?|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(ニュースイッチ 2024年10月17日)
昨今、EVの将来性はどうなのか?というニュースをちらほら目にします。*7
その一方、今回紹介したFANUCのM-1000シリーズや、安川電機の1000kg可搬スカラなど、ロボットメーカはEV業界を強く意識した製品を出してきています。
では、FANUCや安川電機が、EV市場がどんどん伸びていくと確信しているかというと、そうではなく、EV市場も念のため押さえておこう・存在感も示しておこうという思惑ではないかと思います。
世界四大ロボットメーカと言われるFANUC・安川電機・KUKA・ABBのうち、FANUC、安川電機、KUKAの3社はここ2年ほどの間に相次いで大型ロボットをリリースしています。
各社、従来のエンジン自動車生産の市場に対してはすでに確固たる地位があるわけですが、そこに安住せず、攻めの商品展開をしていると言えます。
*1:こちらの量産開始時期は2021年12月
*2:産業用ロボットの場合、参考出展でそのまま音沙汰無しのこともけっこうあります
*3:前述のFANUCのM-1000/1000F-33Aが5300kgで、これでも軽量な方だと思います
*4:参考記事:Collaborative Robots | Industrial Robots by Kawasaki Robotics
*5:Universal Robot社のURシリーズ、安川電機のMOTOMAN-HCシリーズ、FANUCのCRXシリーズのような
*6:もちろんメカだけではなく、ソフトウエア面の充実も必要ですが
*7:フォルクスワーゲンの工場閉鎖については、EV自体が云々というより中国メーカとの競争に負けた側面の方が大きそうですが