ロボットの配線で最も悩ましいのが、関節部分の処理です。
ロボット配線特有の難しさについて紹介していきたいと思います。
他分野での配線も、特有の難しさがあると思います。
こういう製品ではここが難しい!があれば、教えていただけたら嬉しいです。
(前置き)配線・配管の変形の基本モード
まず前提として、配線・配管の変形は
- ねじり(捩回)
- 曲げ(屈曲)
の2つに大きく分類できます。
曲げに関しては、さらに、
- 1か所が繰り返し曲げられるタイプ
- ケーブルベアのように曲げ部が移動していくタイプ
の2つに分類する場合もありますが、この記事では「ねじり」と「曲げ」の2分類で行きたいと思います。
可動用ケーブルのメーカでも、このような耐久試験を実施している記載があります。*1
ロボットケーブルの試験機・寿命シミュレーション|大電株式会社
設計上、曲げ半径はケーブル直径の何倍以上、かつ、使われている導体(素線)の何倍以上、という基準があります。
エアチューブの場合も、最小曲げ半径がカタログに載っています。
捩じりの場合は、導体(素線)がどれくらい歪んでも(引っ張られても)破断しないかという考え方から判断することができます。
ただ、ロボット配線は単純な捩じりor曲げにならないことが多いです。
難しさ1:束ねて使われる
まず、ロボットアーム内の配線はエアチューブも含め、束ねて使われます。
例えば、下記のように束ねられたケーブルが捩じられるとします。
上下2か所でしっかり固定されていてケーブル長手方向のずれが無いとすると、内側に配置されたケーブルと外側のケーブルとでは変形が異なります。
中心のケーブルは捩じられるだけですが、外側のケーブルは捩じり+引張をうけることになります。
(図中黄色のケーブルに注目)
また、曲げの場合でも、束の内側と外側では曲げRが異なります。
内側は圧縮、外側は伸びとなり*2、圧縮側は折れ(キンク)の懸念、伸び側は引張での破断の懸念があります。
配置を調整して、内側の圧縮が発生しないようにすることも可能ですが、そうすると、外側の伸びが大きくなります。
捕捉
なお、同じ問題はケーブル単体でも発生します。
下図のように、1つのケーブルの中に複数の芯線が入っているためです。
参考元:ロボットケーブルとは?|大電株式会社 FAロボットケーブル
ただ、ケーブル単体の場合はケーブルメーカーが耐久試験を実施しており、ケーブルメーカが推奨する使い方では不具合にならないことが多いです。
本記事では、ケーブルの中身にまでは立ち入らないことにします。
難しさ2:複合的な変形
さらに、ねじり・曲げと一言で言える単純な変形でない場合も多いです。
曲げた状態+ねじり
ロボットの第2軸や第3軸でよく見る形状です。
下記の図のように、曲げた状態で、曲げた先が捩じられます。
配線の変形は複雑になりますが、固定箇所の間隔が長くなるため、変形の負荷が分散されるというメリットがあります。
細かい説明は省きますが、ケーブルの構造や素材によって、曲げに強いものと捩じりに強いものに分かれています。*3
そのため、複合的な変形がある場合、曲げと捩じりのどちらに主眼をおいてケーブル選定すべきか?と悩むことになります。
円弧状のケーブルベア
ケーブルベアは、直線状のものは広く知られています。
それを、回転軸周りに巻き付けたような形状です。
igusの製品例では、ロボットに後付けするものが紹介されていますが、ロボット内部での同様の構造で処理している例があります。*4
Robotic Cable Management Solutions: The Less is More Approach | igus®
この構造では、それなりの本数のケーブルを通すことができます。
ですが、3次元的な曲げが発生することに加え、こすれにも注意する必要があるなど、クセのある配置といえます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ロボットの動作部分のケーブル処理について書いてみました。
結構面倒だということが分かっていただけたかと思います。
逆に言えば、各メーカの試行錯誤が感じられる部分ですので観察していて楽しいです。*5
配線に関する過去記事はこちら
fa-robot-watch.com
fa-robot-watch.com