FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

アクチュエータユニットが流行っている件

モータ・エンコーダ・ドライバ・減速機などが一体となっていて、そのままロボットの関節として使えるユニットが続々と登場していますので、ご紹介したいと思います。

アクチュエータユニットとは

明確な定義があるわけではないと思いますが、本記事では、

モータ+エンコーダ+減速機+サーボドライバ+他センサ類を統合した製品として仕上げられていて、ユーザは電源と通信のラインをつなぐだけで使えるもの

という意味で使っています。


エンコーダ・デジマイクロ | 製品紹介 | ニコン デジタルソリューションズ事業より引用

協働ロボットと歩調を合わせるように続々登場

以前から、ギヤヘッド付きモータの延長線上として、アクチュエータユニットと呼ばれるものはあったのですが、
最近の傾向として協働ロボット(や、協働システム)に使用することを前提として、外部との衝突(外力)の検出が可能なものが多いようです。

また、安全を意識して駆動電圧が低いもの(48Vなど)が多いのも最近の傾向だと思います。

各社のアクチュエータユニット

各社(国内メーカが主*1)のアクチュエータユニットと、私の所感を書いていきます。記載の順番に特に意味はありません。

全部が販売中ではなく、開発中の製品(記事執筆時点)もあります。

ニコン -C3 eMotion

一般の方向けにはカメラで、FA業界の人にとっては半導体露光装置、エンコーダで有名なメーカです。
リリースを見ている限り、アクチュエータユニットへの参入は早く、2018年が初出かと思います。
ニコンがロボット用アクチュエータに参入へ、センサー不要で精密制御を可能に:ロボデックス - MONOist

「ダブルエンコーダ構造」により、外力を検出できます。

モータ出力ラインナップ:6種類(一部開発中)
電源電圧:DC48V
外力検知:あり
通信方式:EtherCAT CiA402

細かいスペックなどは、公式サイトから↓
エンコーダ・デジマイクロ | 製品紹介 | ニコン デジタルソリューションズ事業

住友重機械工業 - TUAKA

Sumitomo Cyclo Drive Germanyの製品らしいので、ドイツで開発された模様です。

“産業界のオスカー”「ロボット開発を1年短縮する」一体型アクチュエーターが受賞:ハノーバーメッセ2022 - MONOist

用途に応じて

  • モータ+減速機
  • モータ+減速機+ブレーキ+エンコーダ
  • モータ+減速機+ブレーキ+ダブルエンコーダ+ドライバ+センサ

という3パターンから選択できるのが特徴です。

モータ出力ラインナップ:3種類(開発中)
電源電圧:DC48V
外力検知:あり
通信方式:EtherCAT, DS402, CoE, FoE, FSoE

細かいスペックなどは、公式サイトから↓
オールインワン・アクチュエータ「TUAKA」 - 住友重機械工業株式会社 PTC事業部
TUAKA® - precision actuator (Drive)

THK - RMR

いい感じの動画が見つからなかったので、ニュースサイトからの紹介です。
www.robot-digest.com


他のアクチュエータに比べて、これ!という特色はないようなのですが(失礼)、
THKの製品群は、直動のアクチュエータ要素をはじめ、業界でも使われているため、
そのラインナップの追加ということで、要素検討するときの候補としては非常に有力で、導入のハードルが非常に低いことが強みではないでしょうか。

モータ出力ラインナップ:4種類
電源電圧:48V
外力検知:(公開情報を見る限りでは無いようです)
通信方式:

細かいスペックなどは、公式サイトから↓ (ユーザ登録でPDFダウンロード可能)
ロボットの関節機構に適した回転モジュール「RMR」の受注を開始 ~幅広い設備向けに自由度の高いロボット設計が可能に~【ニュースリリース】 |製品情報|製品ニュース|THKオフィシャルウェブサイト

NSK(日本精工)

アクチュエータについては、動画の46秒付近からです。

滑らかな全方向移動と高精度な衝突判定、日本精工がロボット関連で2つの新技術:協働ロボット(2/2 ページ) - MONOist


横浜国立大学・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で開発・発明された、バイラテラルギヤを採用することで、外力検出を高精度に行えるとのことです。

[気鋭のロボット研究者vol.25] 減速機が変わると、ロボットも変わる【前編】/横浜国立大学 藤本康孝教授|産業用ロボットに特化したウェブマガジン
小型・高効率・高出力なロボット用アクチュエータを開発 | ニュース | NEDO

モータ出力ラインナップ:4種類(開発中)
電源電圧:??
外力検知:あり
通信方式:??

BECKHOFF(ベッコフ)- ATRO

動画、ちょっと長いです...

言わずとしれた制御機器メーカです。アクチュエータだけではなく、アクチュエータ間をつなぐアーム部品(リンク)や土台部品も提供しており(もちろんコントローラも)、「うちから買うものを組み合わせれば好きなロボットアームが作れるよ」というスタンスです(逆に、提供されているスタイルからはみ出した使い方は非常に難しそうです)

そのため、アクチュエータは、前後のリンクに接続するためのメカ・電気的構造を備えており、接続するだけで、関節駆動の電源・通信だけでなく、エアや追加の通信ラインも接続された状態になるとのこと。

驚いたのは、関節が無限回転できること。スリップリングを使っていると予想できるのですが、結構かさばるものなのでどうやって収納しているのか、信号の伝送品質とか大丈夫なのか?というのが気になります。

モータ出力ラインナップ:5種類
電源電圧:48V
外力検知:あり
通信方式:EtherCAT

細かいスペックなどは、公式サイトから↓
ATRO | Automation Technology for Robotics | ベッコフ 日本


双葉電子工業 - Roboservo

ラジコン用モータや、最近ですとドローン関連で有名な企業です。

、6軸の加速度(3軸加速度+3軸角速度)も測定できるのは、珍しく、おもしろい使い方ができそうです。

モータ出力ラインナップ:2種類
電源電圧:48V
外力検知:あり
通信方式:CANopen

細かいスペックなどは、公式サイトから↓
Roboservo® | 双葉電子工業株式会社

まとめ

改めてまとめてみると、たくさんあり、自分でも驚いています。
今後、ある程度の淘汰はあるにせよ、要素部品の1つのジャンルとして定着していくのではないでしょうか。

本当は安全規格への対応状況をまとめたかったのですが、あまり公開情報がなかったため、まとめていません。
第三者認証を取得している要素であれば、人との協働作業を行う装置に組み込む際に、大きなアドバンテージになると思います。
今後も発表される情報を注視していきたいと思います。

*1:中国メーカからも出ているようですが、今回まとめきれませんでしたので、別の機会にまとめor追記したいと思います