FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

ロボットの機構(14)~スコットラッセルリンクを使ったロボットの紹介~

今回は、ユニークな機構のロボットとして、スギノマシンのCRbをご紹介します。


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ロボットの構造

スギノマシンのCRbの模式図です。*1

スギノマシンCRb模式図

手首部分(第4~6軸)は通常の垂直多関節型と同様の構成です。
特徴的なのは第2軸・第3軸で、直動機構が2つ並列に配置されています。
これは、スコットラッセルリンクを応用した構造で、動きの組み合わせで上下と前後の動きを実現しています。

全体としての構造は円筒座標型のロボットに近いですが、一般的には下図のように第2軸(上下)と第3軸(前後)の直動機構が直列に配置されます。

円筒座標型ロボットの構造

スコットラッセルリンクとは

スコットラッセルリンクは下図のような機構で、直線運動の方向を変換する機能を持ちます。

スコットラッセルリンク

変換された後の従動部は数学的に厳密に直線になります。
なお、1800年代の初頭には特許が取得されているという、古くからある機構です。

この機構では回転支点は固定されていますが、スギノマシンのロボットの場合は両方の支点が独立に上下することで、手先の上下と前後の動きを実現しています。

CRbの手先上昇の模式図

メリット

この機構のメリットは何といっても、後方への飛び出しがないことです。
通常の円筒座標ロボットだと、手首を中心に近づけた際に後方にアームが飛び出ることになりますが、この機構では細い円筒の中にロボットが収まる形になります。

後方への飛び出しを無くしたロボットというとライフロボティクス社のCOROが思い浮かびますが、こちらはFANUCに買収された後、生産中止になっています。
ファナックが協働ロボ「CORO」を生産中止、回収に踏み切った理由 | 日経クロステック(xTECH)
エスカレータのようにコマを繰り出してアームを伸ばすという独特の構造でしたが、挑戦的な構造ゆえに信頼性・耐久性を保つのが難しかったのだと思います。

一方、CRbはスコットラッセル機構という昔からある機構で、機械要素も直動スライダ・回転関節であり信頼性が高いです。

まとめ

いかがだったでしょうか。
産業用ロボットというと、垂直多関節・SCARA・パラレルリンクに形態が集約されている感がありますが、こういった機構も活躍中です。
自作のロボットや、自作の設備などの機構を検討する際の引き出しの1つとして覚えておきたいものです。

*1:動画を見たら一目瞭然とは思いますが