前回の記事では、必須の配線(ロボット駆動用配線)とユーザ用配線で分けて考えてみましたが、中を通すか外を通すか、という見方もありますので紹介します。
中を通す
小型ロボットに多いスタイルですが、外観からは配線が見えないタイプです
全て機体の中(カバーの中)に納まっています。
~ハンドリング(搬送・組立・検査)ロボット - MOTOMAN-GP7 - 仕様 - 産業用ロボット | 安川電機の製品・技術情報サイトより画像引用~
メリット
- 機体がすっきり見える
- 配線をうっかり傷つけることがない
- ロボットの清掃が楽
- 防じん防滴(IP性能)に有利
特に食品業界などで定期的な洗浄が必要な場合、配線が内蔵されていることのメリットは大きいです。
配線に水や汚れがたまったりといったトラブルを回避することができます。
デメリット
- 配線の交換が大変(交換を意図していない場合もあります)
- 内部に配線を収める空間が必要
- 上記に伴い、ロボットが重くなりがち
- 限られた空間を通すので、無理な経路になることがある
外を通す
逆に大型ロボットの場合、配線が(部分的に)露出していることが多いです。
大型ロボットは、スケルトン構造というか、全てがカバーで覆われていない構造のため、どうしても配線は露出してしまいます。
そもそもモータが露出していることが多いですからね。
~ハンドリング(搬送・組立・検査)ロボット - MOTOMAN-GP35H - 仕様 - 産業用ロボット | 安川電機の製品・技術情報サイトより画像引用~
メリット
- 配線の組付けや交換が楽*1
- ロボットアームは構造部材のみでよい=軽量化が可能
- 配線にとって余裕のある経路をとりやすい
デメリット
- 搬送や運転中に、配線を傷つけてしまうリスクがある
- 防じん防滴で不利
- 見た目はゴテゴテしてしまう。
なお、外に出ている配線は、国内メーカだと布スリーブや耐火性のスリーブでまとめられていることが多いです。
一方、KUKAやABBなど欧州のメーカーでは、外回しの配線はフレキシブルコンジッド*2と呼ばれるジャバラ状のホースに収納することが多いです。
(下の画像参照)
KR CYBERTECH | KUKA AGより画像引用
配線が外を通るロボットは、おおよその目安としては可搬重量が20kg以上の中型ロボット・大型ロボットになります。*3
特殊事例としては、オリムベクスタ*4が販売しているロボットアームは、小型ロボットですが配線外回しになっています。
ロボット・コントローラ|オリムベクスタ
これは、低コストやユーザのカスタマイズ性を売りにした製品のため、あえての選択かと思います。
防じん防滴(IP性能)について
メリットデメリットの中で防じん防滴について触れましたが、もう少し詳しく説明します。
配線を中通ししている場合のロボットの場合、IP性能はロボットの筐体によって決まります。そのため、ロボットメーカの設計次第で高いIP性能を達成することができます。
実際、IP67などになっていることが多いです。
参考:ハンドリング(搬送・組立・検査)ロボット - MOTOMAN-GP7 - 仕様 - 産業用ロボット | 安川電機の製品・技術情報サイト
逆に、配線外回しのロボットは、IP54など少し低いことが多いです。
また、手首部のみIP67などとなっている場合もあります。
これは配線が外に出ていることが理由というよりは、モータが露出しているため、そのコネクタなどがIP性能の足かせになっているためだと考えられます。
参考:ハンドリング(搬送・組立・検査)ロボット - MOTOMAN-GP35H - 仕様 - 産業用ロボット | 安川電機の製品・技術情報サイト
まとめ
いかがだったでしょうか。
かなり大まかにですが、配線を通す経路とそのメリットデメリットを解説しました。
(本当は各部位ごとに通し方や、それぞれのメーカーごとの特色などもあるのですが、また別の機会にしたいと思います)
展示会などで、各ロボットメーカーの配線に着目して回ってみても面白いかもしれません。
配線・配管に関する過去記事はこちら
https://fa-robot-watch.com/entry/2023/08/01/164720fa-robot-watch.com