FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

1kg可搬クラスの6軸ロボットについて

ABBの新型1.5kg可搬ロボット

ABBが1.5kg可搬の産業用ロボットを発表しました。

可搬重量1.5kg, リーチ370mm.
詳しいスペックは、公式サイトをご覧ください。
IRB 1010 - ABBs smallest industrial robot - Articulated robots portfolio | ABB Robotics (Browse all ABB robots)


IRB 1010 - ABBs smallest industrial robot - Articulated robots portfolio | ABB Robotics (Browse all ABB robots)より引用

他の会社の同クラスロボット

大手ロボットメーカで、このクラスの垂直多関節ロボットをラインナップしているのは、私が知る限り、安川電機と不二越、DENSOくらいです。
安川が出してきて、直後にDENSO、少し遅れて不二越でした。

DENSO

COBOTTAは協働ロボットということで若干毛色が違うのですが。
2017年11月発売。
可搬重量0.5kg, 条件付きで0.7kgまで可能。リーチ342.5mm
COBOTTA|人協働ロボット|産業用ロボット|デンソーウェーブ


その後、他の大手は特に競合する新商品をぶつけてくることもなかったため、
「このクラスはさすがに小さすぎてニーズがあんまりないのかな~」と思っていました。
FANUCは得意のパラレルリンクロボットがありますし。
なので、今回ABBがこのクラスを出してきたことに少し驚きました。

リーチ300mmの使いづらさ

このクラスのロボットのメリットとしては

  • ラインの1工程がコンパクトになり、密集配置できる

ということに尽きると思うのですが(実際各社それを謳っています)、
逆にデメリットを考え出すと、

  • リーチ、可搬重量が小さすぎて、将来の設備改造時に対応できないかもしれないという不安
  • 可搬重量が5kgから1kgになったとて、カサは1/5にはならない。値段も同様に、1/5で買えるわけではない。
  • 密集配置したければ、ロボットを天吊りするなどで可能

などなど、このクラスを無理に使わなくてもいいかな、という気になってしまいます。

可搬重量1kgは業界によっては問題になりません。
ワークはほとんど重さがなくて、ハンドの重さだけ考えてる、みたいなこともありますから。

やはり問題はリーチの小ささ。

リーチ300mmって、ぐるっと回して直径600mm。
人で考えると、座って作業するときのエリアくらいなんですよね。
しかも、はんだ付けや小さいものの組み立てのような、じっと姿勢を変えずにする作業です。(人が肩をあまり動かさず、肘から先メインで動かしている状態。肘から手首まで1フィート=30cmですからね)
人がちょっと体を起こして腕を伸ばすような状況は、リーチ300mmではカバーできないわけです。

もちろん、いつでも人の作業の置き換えから出発するわけではないですが、
設備レイアウト検討をするなかで、このリーチの短さはネックになってくるな~と思う次第です。