機械設計を始めたばかりの人にとって、さび止めの表面処理って案外迷いどころだと思います。
硬度アップや摩擦低減など、積極的に機能を付加する表面処理はまだ検討しやすいのですが、防錆処理は、慣れた人はさらっと決めてしまうことが多く、初心者は逆に考え込んでしまいます。
その理由として
- 種類がたくさんあり、違いや使い分けが分からない
- 人によって呼び方が違う
といった点があると思います。
そこで、まずはこれだけ覚えておこう!という表面処理を5種類ピックアップしてみました。
別名もなるべく書くようにしています。

コスト・寸法への影響・防錆能力・対象となる材料・別名の5つの観点でまとめました。
これ以外の表面処理や、詳しい特性などは、おいおい学んでいったらいいと思います。
四三酸化鉄皮膜
- コスト・・○(とても安い)
- 寸法への影響・・○(小さい)
- 防錆能力・・×(低い)
- 材料・・鉄鋼(SUSは不可)
- 別名・・四酸化三鉄皮膜・クロチャク・黒染め・フェルマイトなど
価格が安く、メッキの膜厚が非常に薄い(1~2μm)ので寸法にほとんど影響しないというメリットがありますが、防錆能力が非常に低く、すぐに錆びます。*1
特殊な条件*2を除いて、あまり使用しない方がいいかと思います。*3
白色三価クロメート
- コスト・・○(安い)
- 寸法への影響・・×(大きい・安定しない)
- 防錆能力・・○(高い)
- 材料・・鉄鋼系材料(SUSは不向き)
- 別名・・三価ホワイト・三価クロム化成処理・亜鉛メッキなど*4
一般的な環境下での防錆能力は十分あり、価格も比較的安いです。
ただし、膜厚のコントロールが困難なため、はめ合い公差などがある部品では使用できません。
精度の要求がそれほど厳しくない板金部品などに向いています。
処理の流れとして、下地として亜鉛メッキを施し、その上から化成処理であるクロメート処理を施します。
「亜鉛メッキ」と指示したらクロメート処理がされるのが普通ですが、六価クロム*5を使用したクロメート処理もあるため、「三価クロメート」を明記した方がいいでしょう。
無電解ニッケルメッキ
- コスト・・×(高い)
- 寸法への影響・・○(コントロール可能)
- 防錆能力・・○(高い)
- 材料:何でも可(ただし高温に弱いものには不向き)
- 別名:Ni-Pメッキ・カニゼンメッキ・化学ニッケルメッキ
コストは高いですが、防錆能力が高く、膜厚のコントロールが可能(例えば±1μmなど)です。
そのため、勘合部のある鉄鋼部品などではこのメッキを使用することが多いです。
その場合、メッキ前の加工は、メッキ膜厚を考慮した寸法公差で仕上げる必要があります。
(例:メッキの膜厚で穴は小さくなるので、その分大きく加工しておく)
アルマイト
- コスト・・○(比較的安い)
- 寸法への影響・・×(変化する)
- 防錆能力・・○(高い)
- 母材:アルミ二ウム
- 別名:特になし*6
アルミニウムの表面に酸化被膜を生成することで防錆します。
膜厚管理はある程度可能ですが、1つ前の無電解ニッケルメッキほどは精度が出ないので、寸法公差がきつい場合は事前に確認した方がいいでしょう。
基本的には、寸法精度がそれほど厳しくないアルミ部品に使用すると思っていたらいいと思います。
塗装
- コスト・・×(高い)
- 寸法への影響・・×(影響が大きいが対処は可能)
- 防錆能力・・○(高い)
- 材料:何でも可
- 別名:特になし
塗装も立派な防錆処理です。
組み立てた後で丸ごと塗装する・はめ合い部やネジ部はマスキングするなど、自由度は高いですがその分手間がかかるためコストは高めとなります。
外観のクオリティにこだわらないならば自分でやってしまえるので、いざという時には役に立ちます。