一般的な産業用ロボットは「セミクローズドループ制御」となっています。*1
「おいおい『オープンループ』と『クローズドループ』は知ってるけど半分クローズってどういうこと?」と思った方、この記事を読んでみてください。
(なお、産業用ロボット以外でもセミクローズドループはありますが、本記事ではロボットに限って書いています)
ロボットの制御
コントローラから見ると、ロボットの関節は下の図のように、
コントローラ⇒モータ⇒減速機となっており、減速機の出力軸が最終の出力となります。

コントローラが「これだけ電流を流せば、アームがこれだけ動くはず!」といって、一切フィードバックをかけないのはオープンループです。(下記図)

最終出力である減速機の出力軸からフィードバックをかけた場合、クローズドループとなります。(下記図)

実際の多くの産業用ロボットは、モータの出力位置まではフィードバックをかけ、それ以降の減速機の出力軸はきちんと動いているとみなすという制御になっています。(下記図)
完全なオープンループ制御でもなく、完全なクローズドループ制御でもないため、セミクローズドループと呼ばれています。

産業用ロボットではセミクローズドループが一般的なため、クローズドループで制御している場合、「『フル』クローズドループ」と強調して呼称することが多いです。
セミクローズドループを採用する利点
セミクローズドループの説明は以上なのですが、なぜこのような制御が一般的になっているか考察していきます。
構造を簡素に保てる
減速機の出力側にエンコーダをつけるのは、機構的に結構大変です。
それなりに気を遣う要素部品ですので、裸で置いておくわけにもいかず・・・
そのための配線も増えることになります。
モータにはエンコーダが搭載されているので、その位置情報を使うのがお手軽です。
振動の影響を受けづらく、制御を簡素化できる
ロボットが停止する際、振動が収まって静定までに一定の時間が必要です。
アームなどの部材のばね成分が効いてしまってビヨンビヨンするイメージです。
そのため、減速後の位置からフィードバックをかける場合、停止直前の振動によってハンチングが発生したりといった制御の難しさが出てきてしまいます。
エンコーダの分解能的に有利
これは結果として、という話かもしれませんが。
例えば、360の分解能があるエンコーダがモータに付いていたとして*2、100の減速比を持った減速機と組み合わせると、減速機の出力軸換算で分解能は36000になります。
それほど高精度のエンコーダを使わなくても、高精度な位置決めが可能となります。
アーム剛性の影響(しなりなど)もあるため、減速機の影響はそれほど大きくない
過去記事でも書きましたが、減速機以外にも位置決め精度を悪化させる要因はたくさんあります。
fa-robot-watch.com
つまり、頑張ってフルクローズドループ制御にしたとしても、そのループのさらに外に精度悪化の要因がまだあるということです。
ただし、それに合わせて各部位の剛性を高めるなど、ロボットの設計全体として取り組む必要があります。
以上のような理由から、セミクローズドループにすることで機能とコストのバランスがとれるため、広く採用されていると考えられます。