FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

産業用ロボットの可搬重量・リーチ・自重の関係-6軸垂直多関節編(2)~詳しく~

前回に引き続き、産業用ロボットのスペックの傾向を調べていきたいと思います。
記事の情報に関する注意事項は、前回記事に書いてありますので、未読の方はそちらをご覧ください。
fa-robot-watch.com

今回は前回よりも詳細に観察していきますが、体系的に調べた訳ではなく、見ていて気が付いたことを述べているだけですのでご了承ください。

可搬/自重比のグラフを観察

全体の傾向

再度、横軸に可搬重量、縦軸に可搬/自重比を取ったグラフを見てみましょう。

可搬重量と可搬/自重比

小型ロボット(可搬重量20kg以下)を除くと、傾向としては右肩上がりのグラフになっており、可搬重量の小さいロボットは可搬/自重比が小さく、だんだんと大きくなっていっています。

原因は、断定できませんが、推測はできます。
はじめに、モータのサイズ違いを例に考えてみます。
モータにはロータ・ステータ部と、エンコーダとブレーキがついています。
出力が小さいモータの場合、ロータ・ステータ部は小さくなりますが、エンコーダやブレーキはそれほどには小さくなりません。
つまり、モータ容量が小さい場合、エンコーダやブレーキは相対的に大きな要素部品ということになります。

これと同様のことが、ロボットでも言えそうです。
可搬重量(出力)が小さくなっても、小さくなりづらい要素部品があり、その結果、小さいロボットでは可搬/自重比が小さくなってしまうということです。
小さくなりづらい要素部品としては、モータ付属のエンコーダやコネクタ*1、ケーブル*2、構造部材*3などが考えられます。

逆に、ある程度ロボットが大きくなってくると最適設計を取りやすくなり、だんだんと可搬/自重比が大きくなっていく、ということではないでしょうか?

小型ロボットは自重100kgに境界線がある?

次に、密集地帯の25kg可搬以下の部分に注目してみます。

可搬重量と可搬/自重比(可搬重量100kg以下)

すると、可搬/自重比の立ち上がりが急なグループと、緩やかなグループの2つに分けられそうです。間にラインを引いてみます。

可搬重量と可搬/自重比(可搬重量100kg以下)ライン追加

2グループを分けるのは、自重が100kgのラインです。

自重100kgよりも軽量な機種は、両持ち構造が多く、リーチは最大でも1400mm程度であり、小型ロボットに特化した設計になっていると言えそうです。

逆に、自重100kgよりも重い機種は、片持ち構造が多く、リーチは1500~2000mmが多いなど、中型・大型ロボットの延長線上の設計の機種と言えそうです。

アークは可搬/自重比が小さいか

私は、「アーク溶接用のロボットは、可搬重量は小さめ*4でリーチが長く、可搬/自重比が小さい機種が多い」という趣旨のことを前回の記事や、過去の記事で何回か書いています。実際にそうなのか、確かめてみます。
今回集計したロボットの中で、明確にアーク溶接用となっていたものは37機種ありました。
その可搬/自重比の分布は下記です。

アーク溶接用ロボットの可搬/自重比の分布

前回も紹介した、全機種(484機種)での分布と比較してみると、違いは明らかです。
(グラフは見た目を揃えるために作り直しています)

全機種の可搬/自重比の分布

念のため、アーク溶接用ロボットと同じクラスである可搬重量35kg以下(194機種)で比較してみても、アーク溶接用ロボットの可搬/自重比が小さいことが分かります。

可搬重量35kg以下の機種(アーク用除く)の可搬/自重比の分布

外れ値のロボットを見てみる。

グラフの中の外れ値、つまり可搬/自重比が特に大きいロボットを個別に見てみます。

可搬/自重比が特に大きいロボット

グラフで丸を付けた6機種は下記の通りです。

メーカー 機種名 可搬重量 リーチ 自重 可搬/自重
[kg] [mm] [kg] [kg]
(a) FANUC LR Mate/14-7D 14 727 25 0.56
(b) FANUC LR Mate/14-9D 14 911 27 0.52
(c )KUKA KR 500 R2800-2 500 2800 1671 0.30
(d) KUKA KR 640 R2800-2 640 2800 2170 0.29
(e) KUKA KR 800 R2800-2 800 2800 2400 0.33

FANUCの小型2機種

(a),(b)としたFANUCの2機種、LR Mate/14-7DとLR Mate/14-9Dは、自重の50%以上の可搬重量があり、ずば抜けています。
製品のリーフレットを見ると、LR Mate/14-7Dの最大動作速度は1000mm/s、LR Mate/14-9Dの最大動作速度は500mm/sに制限されているとの記載があり、かなりゆっくりとした動作のロボットであることが分かります。
自重を低く抑えるために、動作速度を抑えたうえで構造部材を削ったりなどの軽量化を図っていると推測できます。
https://www.fanuc.co.jp/ja/product/catalog/pdf/robot/LRMate(J)-02.pdf

KUKAの大型3機種

(d),(e)とした、KUKAのKR 640 R2800-2とKR 800 R2800-2は、下記のような非常に特徴的な構造をしています。

KR FORTEC ultraシリーズ

画像:KR FORTEC ultra – heavy-duty robot with 800 kg payload | KUKAより引用
この構造により高い可搬/自重比を実現していると思われます。
同ページ内に

“Lightweight” in the heavy-duty class: only 2.2 ton weight
(重可搬ロボットの軽量級:わずか2.2トン)

と記載がある通り、可搬/自重比の大きさを1つの強みとして押し出しています。

同じくKUKAの(c)KR 500 R2800-2は一般的な構造であり、公開情報や外見からは可搬/自重比の大きさの理由がいまいち分かりませんでした。

*1:容量に応じて小さくはなるが、施工性や製造面から小ささの限界あり

*2:電流が小さくなれば導体は細くなるが、被覆は薄さに限界あり

*3:小さくなると、製造上の都合による最低肉厚が影響してくる

*4:アークのトーチは比較的軽量なため