ロボットの基本的なスペックである可搬重量とリーチ、運用面で重要*1になる自重(制御装置等を除く、マニピュレータ部のみの重量)の3つ。
何となく、「可搬重量の大きなロボットはリーチも長く、自重も当然重い」という感覚は、皆さんが持っていると思います。逆に「可搬重量の割りには軽い」と感じる機種もあると思います。
では、可搬重量とリーチの間に関係性(傾向)があるのか?、可搬重量に対してどれくらいの自重であれば「軽い」のか?などを明らかにすべく、市販されている産業用ロボットについて、可搬重量とリーチと自重の3つの間に、どのような関係・傾向があるかを調べてみます。
- はじめに
- 対象メーカと機種・データの収集方法
- 「可搬/自重比」とは
- 「可搬重量」と「リーチ」
- 「可搬重量」と「可搬/自重比」
- 「自重」と「リーチ」
- 「可搬重量」と「自重/リーチ比」
- 見えてきたこと
- 今後の予定
はじめに
以前の記事で、ロボット黎明期の機種と現代の機種について、可搬重量や自重の関係を比較してみたことがありました。
その時はFANUCのロボットを現代のロボットの代表としました。
fa-robot-watch.com
冒頭でも書いたように、今回は各ロボットメーカの現行機種について集計し、調べてみたいと思います。
対象メーカと機種・データの収集方法
下記のメーカのロボットについて、
- FANUC
- 安川電機
- KUKA
- ABB
- 川崎重工
- 不二越
- EPSON
- 三菱電機
- DENSO WAVE
- Comau
- Staubli
下記の条件に合う機種について、
- 6軸の垂直多関節型(協働を除く)
- 可搬重量は1000kg未満
「可搬重量・リーチ・ロボット自重」を集計しました。
協働ロボットや4軸・5軸のロボット、SCARAやデルタロボットなどは対象外です。
逆に、アーク溶接用や塗装用などの機種は少し傾向が異なると考えられますが、あえて区別していません。
また、小型ロボットはアルミ系、中型・大型ロボットは鉄鋼系が主材料と考えられますが、そこも考慮していません。
トータルで484機種のデータが集まりました。
(データに7軸ロボットが2機種混ざっていたので修正しました。グラフも差し替えました。2025/11/30)*2
いくつか注意点です。
- あくまで全体の傾向を何となく見ていくという趣旨です。厳密な統計ではありません。
- 集計の単位はあくまで「機種数」であり、出荷台数などではありません。
- 公開情報(ユーザ登録等なしで取得できる情報)を集計しており、情報が揃わなかった機種は除外しています。
- なるべく重複が無いようにしました*3が、ある程度恣意的になってしまっていることをご了承ください。
- 集計時の間違いなどがあるかもしれませんので、ご了承ください。
「可搬/自重比」とは
私が勝手に呼んでいるだけなのですが、ロボットの可搬重量を、自重で割ったものが、「可搬/自重比」です。
この数字が大きいほど、体格の割りに力持ちなロボットと言えます。
※もちろんこれは1つの指標にすぎず、可搬/自重比が小さいからといって設計的に劣っているということではありません。リーチや動作速度、剛性、さらにはメンテ性やコストなど、様々な要因を検討した結果だからです。
「可搬重量」と「リーチ」
まずは、横軸に「可搬重量」[kg]、縦軸に「リーチ」[mm]でプロットしてみます。

・・・いまいちよく分からないので、横軸を対数目盛にしてみます。

何となく傾向が見えてきました。
エクセルで近似式を求めてみると、
リーチ[mm] = 1059 x log10(可搬重量[kg]) + 406
という式になりました。
すごい大雑把に言うと、可搬重量が10倍になるとリーチが約1000mm増えるという傾向になります。
なお、リーチと可搬重量の関係は、技術的制約というよりは商品企画の話になりますので、この結果は、ロボットメーカと市場のやり取りの中で収斂した結果と言えると思います。
「可搬重量」と「可搬/自重比」
次に、横軸に「可搬重量」[kg]、縦軸に「可搬/自重比」でプロットしてみます。

可搬重量10kg以下でのデータの密集度合いがすごいですが、まずは全体的に見てみます。
「可搬/自重比」が0.1~0.2の範囲に多くの機種が存在していることがわかります。
実際、ヒストグラムを描いてみると、下記のようになります。

0.09~0.21の4区間でほぼ70%の機種、0.03~0.21までの6区間でほぼ90%の機種をカバーしています。
多数*4のロボットは、可搬重量は自重の10%~20%程度、逆に言うと、可搬重量の約5倍~10倍の自重ということになります。
可搬/自重比が0.21を超えるような機種はかなりレアであり、特別な工夫により達成していることが予想されます。
逆に、0.03以下の機種もレアであり、特別な事情があることが予想されます。
少しだけ詳しく
横軸を対数にしてもう少し見てみます。

可搬重量10kgを境として、別の傾向になっているように読み取れます。
可搬重量10kg以下の機種は、データの幅がかなりありますが、商品展開の激戦区であり、様々なバリエーションのロボットが発売されていることの現れかと思います。
可搬重量10kgより大きい機種では、可搬重量が大きくなるにつれて、徐々に可搬/自重比が大きくなります。
小型と大型で設計思想が異なるためか?速度を犠牲にして軽量化を図っているのか?など、いろいろ思いつきますが、詳しい考察は別記事で行うことにしたいと思います。
「自重」と「リーチ」
「自重」と「リーチ」についてですが、ここまでの議論で、
- リーチと可搬重量・・・対数関数
- 可搬重量と自重・・・比例(比例定数にばらつきはあるものの)
という関係が何となく見えていますので、リーチと自重も対数関数になっていることが予想されます。
「自重」[kg]を横軸(対数目盛)、「リーチ」[mm]を縦軸としてプロットしたのが以下のグラフです。

「可搬重量」と「自重/リーチ比」
最後に、今回集計した3つの指標を1つのグラフに表したいと思い、「自重/リーチ比」[kg/mm]を導入してみます。
そのまま読み取るとリーチ1mm当たりの自重なのですが、「自重=体積の指標」と考えれば、「自重/リーチ」は断面積の指標とも捉えられ、ロボットアームの太さの指標として使えるのではないかと思います。
「可搬重量」[kg]を横軸に、「自重/リーチ比」[kg/mm]を縦軸にプロットした結果が以下です。

可搬重量と自重/リーチ比が比例しているようなグラフになりました。
単純に機械工学的に考えた場合、可搬重量⇒荷重・自重/リーチ比⇒断面積と置き換えると、荷重と断面積が比例する形になるので何となく合致しているようにも思えますが、先ほども書いたように、ロボットのサイズによって設計思想や、そもそも材料の違いなどもあるので、単純な議論はできません。
こちらも別記事で考察していきたいと思いますが、このような結構きれいなグラフになることが興味深いです。
見えてきたこと
ここまでで見えてきたことは、以下の通りです。
- 可搬重量が10倍になるとリーチは1000mm増える
- 可搬重量が自重の10%~20%程度(可搬重量の約5倍~10倍の自重を持つ)であるような機種が多数を占める
今後の予定
次回以降は、
- 小型ロボットに限定して傾向を詳しく見てみる
- 用途で層別してみる
- 大型ロボットと小型ロボットの設計手法の違いから検討してみる
- リンクありロボットとリンクレスロボットで層別してみる
といったことを予定しております。*5



