ロボットの構造と軸数(自由度)についてまとめていきます。
【前置き】軸数?自由度?
まずは呼び方についてです。
「自由度」はロボットの運動学的というかアカデミックな意味合いが強く、「軸数」は実務寄りで具体的な設計を意識している印象です*1。
大学では「自由度」をもっぱら使っていましたが、就職後は「軸数」「何軸」と呼ぶようになりました。
産業用ロボットの分野では、軸数イコール自由度と考えてもまず問題ないと思います。
本記事では「軸数」で記載していきます。
6軸ロボットが基本
産業用ロボットというと、下記のような形態をイメージするかと思いますが、基本的に6個の関節を持っています。

この6個の関節は、
- 根本側の3つの軸:第1軸~第3軸(基本軸と呼ぶことも)
- 手先側の3つの軸:第4軸~第6軸(手首軸と呼ぶことも)
のグループに分けることができ、役割が異なります。
- 根本側の3つの軸:手先の位置を決める
- 手先側の3つの軸:手先の姿勢を決める*2
6軸というのは、3次元の空間内において、任意の位置で・任意の手先姿勢をとるための最低限の軸数であり、6軸よりも軸数が少ない場合、動作範囲内であっても任意の位置や姿勢に到達できないことになります。
7軸ロボット
前述の6軸を備えたロボットは、任意の手先位置で任意の手先姿勢をとれるのですが、その時、ロボットの姿勢も1つに決まってしまいます*5
そのため、「この手先位置・手先姿勢だと3軸目のところが設備にぶつかるんだよな」となった場合、設備をどかすか、その姿勢をあきらめるしかありません。
ロボットの適用検討をする場合、干渉なくロボットが目的の動作をできるように設計するのが基本なのですが、元からある設備の都合等で、不可能な場合もあります。
その時に候補の1つになるのが、7軸ロボットです。
多くの7軸ロボットは、下記の図の位置に追加の7軸目が入っており、この軸を冗長軸と呼んだりします。

このような冗長性のあるロボットの場合、手先位置・手先姿勢を固定したまま、ロボット全体の姿勢を変化させることができます。
過去記事でも少し言及しています。*6
fa-robot-watch.com
また、こちらの記事では、7軸目の配置が少し違うロボットを紹介しています。
fa-robot-watch.com
なお、7軸ロボットはメーカにより力の入れ具合に温度差があります。
私の調べる限り、安川電機はそれなりの種類の7軸ロボットをラインナップしていますが、FANUCは逆にほとんどありません。
ロボット全体の需要から見るとどうしてもニーズは少ないですし、各社の商品戦略・思想の違いとなって顕れているように感じます。
軸数が6未満のロボット
逆に、軸数が6軸よりも少ないロボットもあります。
多くの場合は、用途を限定することで手先の姿勢が制限されることを許容し、軸数を少なくしてコストダウンや高速化を図っているロボットです。
パレタイズロボット(4軸が主流)
パレタイズというのは、コンベヤなどから流れてきたワーク(箱や袋など)をパレットの上に整列させる作業です。
この場合、箱の天地をひっくり返したりする必要はないので、空間内の位置XYZ+手首の水平回転*7=4軸で足りることになります。
その代わり、高速動作かつ長時間の連続運転や低コストといった利点につなげています。
過去記事で詳しく述べていますのでご覧ください。
fa-robot-watch.com
スカラロボット(4軸が主流)
スカラロボットは元々、ピック・アンド・プレース*8や部品のハメコミなどを想定して開発されたロボットです。
パレタイズと同様、空間内の位置XYZと手首の水平回転の4軸のみを備えています。
低コスト・省スペース・動作が高速といった利点があります。
パラレルリンクロボット(3軸+α)
パラレルリンクロボットは、垂直多関節のくくりから外れてしまうのですが、併せて紹介します。
基本構造としては空間内の位置XYZ=3軸のみを備えています。モータや減速機などの重量物が根元に集中しているため、動作するのがロッドだけであり、非常に高速な動作が可能というメリットがあります。
ただし、動作範囲はロボットの下部*9に限定され、それほど広くありません。
補足)パラレルリンクロボットの手先姿勢
パラレルリンクロボットでも手先姿勢を変更できるものがあります。
伸縮するドライブシャフトが根本にあるモータから手先につながっていて、手先の動作を実現しています。
下記のABBの動画だと2軸追加していますが、FANUCのゲンコツロボットなどのように1軸追加仕様、3軸追加仕様といった構造も可能です。
3軸追加した場合は、元からある軸=位置のための3軸・追加した軸=姿勢のための3軸となり、任意の手先位置で任意の手先姿勢を取れることになります。
外部軸とは?
ロボットの動作範囲を補うために、走行装置や昇降装置を使うことがありますが、これらは「外部軸」「追加軸」「付加軸」などと呼ばれます。
(あるいは、機能を表すように走行軸や昇降軸と呼んだりします)
ここまでに述べた軸とは別のくくりとなりますのでご注意ください。
ロボットのコントローラの仕様などで、「外部軸3軸対応」などと記載があった場合、ロボット自身の軸とは別に、このような外部軸をまとめて制御できることを表します。*10
参考ページ
産業用ロボットの構造?ロボットアームが動く仕組みを徹底解説
産業用ロボットのしくみ(分解図) | 産業用ロボットとは | FAロボット.com | キーエンス
ロボットの仕組み | ロボット基礎情報・特集 | ロボット導入支援サービス | MISUMI(ミスミ)
*1:個人の感覚です
*2:ロール・ピッチ・ヨーで表すこともありますが、今回は割愛します
*3:JIS B0134「用語」より
*4:実際にロボットを使用する時は、ツールの先端などをTCP; Tool Center Pointと設定して使用します。ティーチングなどで「手先位置を変えないで手先姿勢を変える」という操作をした場合、このTCPの位置が変わらないようにロボットが動作しますが、この時は第4~6軸に加えて、第1~3軸も動作します。これは、TCP位置を変更しないで手先姿勢を変更する場合、手首基準点を移動させる必要があるからです。
*5:正確には1通りではないのですが、ロボットの構造などから実用上は1つと扱って差し支えないかと思います。限定的な状況では、逆運動学の別解の姿勢を使えることもありますが・・
*6:過去記事内で、別途詳しく記事を書くと言っていますが、まとめられていないです。7軸ロボの動作の図解を作成するのがなかなか大変で・・・
*7:ヨー軸
*8:ある位置からワークを持ち上げて、別の位置に置く作業
*9:吊下げ設置の場合
*10:外部軸は、ロボット自身を移動させる軸だけではなく、溶接用のターンテーブルなどのジグのこともあります。





