今回は機械類の制限(limits of machinery)について、産業用ロボットを念頭にまとめていきます。
別の記事でまとめた、「制限装置」*1とは全く別ものですので、ご注意ください。

出典
ISO12100:2011(JIS B 9700: 2013)の5.3「機械類の制限の決定」という箇所に記載があります。
日本語のJISで見た場合、見開き2ページにも満たない分量ですが、リスクアセスメントの一番最初の工程であり、おろそかにできません。
本記事は、日本語版のJIS B 9700: 2013を元に記載しています。
概要
大まかに言うと、「この機械は、誰が・どこで・どのように・どのくらいの期間・使ってよいか?」ということを決定したものです。
英語の5W1Hで考えてもいいかもしれません。
規格内では下記のような構成で記載されています。*2
- 5.3.2 使用上の制限
- 5.3.3 空間上の制限
- 5.3.4 時間上の制限
- 5.3.5 その他の制限
どの項目もあっさりした記述にとどまっていて、ピンとこないかもしれませんので、順番に見ていきましょう。
各項目の説明
※見出しを適宜省略したり、いくつかまとめたりして記載しています。
5.3.2 使用上の制限
a) 機械の運転モード及び介入手順
ロボットで言うと、基本的に自動運転と教示の2モードがあり、切り替え手順も決まっています。また、チョコ停やメンテナンス時には決められた手順で停止や電源遮断・再起動などの介入を行います。
そのような手続き等に関連する項目です。
b)~d)操作する人・周辺にいる人はどのような人か
どのような人が機械を操作、または接近していいか、必要な教育は何かといった内容です。
産業用ロボットの場合は、製造業等に従事している人が使用することが前提となりますが、
- 起動・停止など、日常的な操作が可能なのはどのような人か?
- ティーチングや分解保守など、もう少し専門的な作業をする人はどのような人か?
- ロボットを操作しないが、ロボットの近くに接近する人にはどのような教育が必要か?
というように、レベル(?)分けも必要です。
(原文にはもう少し細かく記載がありますが、まずは上記のような内容を把握してください)
日本では、ロボットのティーチングや分解保守などの業務をする者には特別教育が必要であると法令で定められていますが、それは最低限の話です。
ロボットメーカによって、例えば、この機種の分解点検を実施する前にはそれに特化した講習を受講してほしい、もしくは、ロボットメーカのサービス人員のみが実施してよい、などと定めている場合があります。*3
5.3.3 空間上の制限
a)可動範囲、b)運転及び保全のように機械に係る人に対する空間要求事項
ロボットの動作範囲と、操作者に危害が及ばないための設置レイアウトなどです。
産業用ロボットの場合、制限装置を用いて動作範囲を変更することができるため、システム構築の際は、変更後の動作範囲にもとづいてリスクアセスメントを進めることもあります。
制限装置については、過去記事参照ください:ロボットの制限装置(limiting device)について - FA・ロボット業界の片隅から
c)"オペレータ-機械"間のインタフェースのような機械類と人との係り方
産業用ロボットの場合は、ティーチペンダントや各種スイッチ類を介してオペレータがロボットを操作します。
また、ロボットが備えているIO(入出力)を使ってスイッチを増設したり、ライトカーテンを追加したりなど、人-ロボット間のインタフェースを増やすことも可能です。
d)"機械-動力源"間のインタフェース
産業用ロボットの場合は、多くの場合電力で動くため、電源ケーブル・コネクタがインタフェースということになります。
このインタフェースの制約が大きい事例として、「別で用意したモータからベルトなどで物理的に接続して動力供給を受ける」といった構造の機械が考えられますが、ロボットの場合はそういったことはなく、自由度が高いといえます。
なお、室内/室外といった事柄は、環境面として「その他の制限」に分類されています。*4
5.3.4 時間上の制限
a)機械類やコンポーネントの寿命上の制限、b)推奨点検修理間隔
耐用年数やメンテナンス周期、消耗品の交換周期などです。
5.3.5 その他の制限
a)加工材料の制限
一部、加工を行うロボットもありますが、あまり一般的ではないため割愛します。
b)維持ー要求される清掃レベル
産業用ロボットについては、食品用などの用途を除き、清掃もそこまで大きく取り扱われないので割愛します。
(それは違うぞ!という意見がありましたらご連絡ください)
c)環境面
この環境面、しれっといろいろ記載してあるのですが、1つ1つしっかり確認する必要があります。
- 許容温度
- 許容湿度
- 標高
- 室内/室外
- 爆発性雰囲気の可否
- 直射日光
- 異物の存在(スパッタなど)
「水がかかってもいいの?」「クリーン度は?」「異物に対する対策は?」「何度までの環境なら動作可能?」「防爆?」といった、ロボットを使用する上で気になることが、このc)に押し込められています。
各立場から見た「機械類の制限」
製造業者(供給側)が「機械類の制限」を重要視しないといけないのは言うまでもありませんが、使用者側も意識する必要があります。
「機械類の制限」は、使用者に伝わる際には「使用上の情報」の中に点在する形となります。
そのため、ぱっと見は分かりづらいのですが、、本記事で述べた事柄を意識すれば、自ずと製造業者が設定した「機械類の制限」が読み取れると思います。
産業用ロボット特有の事情として、
ロボットメーカ ⇒ 生産システムメーカ*5 ⇒ 使用者
という流れで三者が絡むことが挙げられます。
三者の関係は過去記事でも述べていますので、ご覧ください。
fa-robot-watch.com
そのため、
- ロボットメーカが「機械類の制限」を決定してリスクアセスメント実施、使用上の情報として伝達
- それを受けて生産システムメーカが「機械類の制限」を決定してリスクアセスメント実施、使用上の情報として最終ユーザに伝達
というように2段階になります。

ユーザは、システム構築の際のリスクアセスメントを外部業者に任せきりにせず、「機械類の制限の決定」の段階から連絡を密にして意思疎通を図ることが重要と言えます。
まとめ
説明してきた「機械類の制限」は、機械を使用する上での前提条件となるものです。
そして、その前提条件はロボットメーカやロボットの機種ごとにそれほど大きく違うということはありません。
そのため、ともすれば、当たり前のこととして確認を省略されたり、さらっと流されたりしがちです。
ですが、常に全く同じということでもありません。
リスクアセスメントの出発点であるということを肝に銘じ、毎回しっかりと確認することが大切だと思います。*6



