時間が経ってしまいましたが、2025国際ロボット展の感想をまとめておきたいと思います。国際ロボット展の感想というより「国際ロボット展をきっかけとして考えたこと」の記事になっていますので、ご了承ください。
最後の3回目はフィジカルAIについてです。

はじめに
製造業の人は、今までの市場実績や信頼性を重視する保守的な部分もありつつ、新しもの好きという側面も持っています。
というより、(特にFA機器メーカは)進歩が停滞しているように見られることを嫌う、と言ったほうがいいかもしれません。
そのため、展示会ではその時々のトレンドを盛り込んだ展示をします。
ビッグデータ、ディープラーニング、IoTなどなど・・・*1
ですが、各メーカがどれくらい本気かというと、そこは温度差があります。展示会で見学していても、
- 買い物でお茶を濁しているな
- 今まであった機能をマイナーチェンジして名前だけ変えたな
と感じる場合も多いものです。
逆に、長期の戦略をしっかりと持っているメーカは先取で開発を進めており、元々リリースを予定していた機能に流行りのネーミングを付けているだけという場合もあり*2、さすがだと感じます。
フィジカルAIも、各メーカが各々の立場からモノを言っていますので、メーカによって、あるいは人によって、意味するところが微妙に異なることに注意が必要だと思います。
AI・ソフトウエアから見た産業用ロボット
ネーミングはいったん置いておくとして、AIとロボットアームの組み合わせは、AI活用が拡大した結果として妥当なものだと感じます。
そもそもソフトウエアは、単体では現実世界に作用する手段を持ちません。
例えば通販サイトのソフトは購入のやり取りや決済をするだけであり、物理的に梱包・出荷・輸送するという工程を含めないと物を販売するという目的を達成できません。*3
ソフトウエアは、現実世界に作用するためのインタフェースを常に必要としていると言え、汎用的に使える産業用ロボットは、その目的にピタリとはまります。
私個人の意見ですが、ロボット業界がAIを必要としているというよりも、AIを含めたソフトウエアがロボットを必要としているという側面の方が強いと感じます。
ソフトバンクのABBロボット部門買収がその象徴と言えます。
ソフトウエア側から見ると、ロボットアームというハードウエアは、現実世界とインタラクトするためのインタフェースでしかありません。*4*5
(ソフトウエアが現実世界に作用すると聞くと、映画のターミネーターのような世界が来るのではと心配になるかもしれませんが、あくまでソフトウエアを構築した人間の意思・意図が反映されるというだけです)
製造業側から見たAI
では、製造業側から見て、AIとどのように付き合っていくべきでしょうか。
「AIが製造業界が大変革させられる」「AIが製造業を呑み込んでしまう」というような論説も見かけることがありますが、私としては「FAの一要素として、AIをうまく取り込んでいく姿勢」が大事だと考えます。
一例として、AIと安全について考えてみます。
製造業における安全とは、「ILO(入力・論理・出力)を明確に定義した上で、危険側故障の確率を可能な限り低くする」という考えのもとに成り立っています。*6*7
そのため、L=論理の中身がブラックボックスのAIとは非常に相性が悪いです。
したがって、従来通りの安全方策の枠組みを構築したうえで、AIによる動作(軌跡生成など)は、その内側に留めておくという形をとるべきだと思います。
具体的には、安全適合のエリアセンサと、ロボット安全機能の停止監視やエリア監視を組み合わせて、人とロボットの動作領域を分離しつつ、ロボットの動作領域内でのみ、AIで生成された動作を許可するというような形です。万一、AIが動作領域を逸脱したするような軌跡を生成した場合は、安全機能が即座にロボットを停止させることになります。

製造業とAIの全体像を考えたときも、同様の関係性になると思います。
AIが生産の工程全体を掌握するのではなく、生産工程の要所要所にAIをうまく組み込んで使用するという形です。
もちろん、AIをうまく活用することのインパクトは大きいと思います。
特に、ランダムピッキングや良品判定など、従来の手法で実現しようとしたら無数の場合分けが必要になるような用途では、強力なツールになるでしょう。
ですが、現段階でのAIに関する様々な言説はかなり過熱・誇大なものもあるため、冷静に受け止める必要があります。
まとめ
以上、いろいろ書きましたが、「必要以上に恐れる必要もないが、自分には関係ないものとして突っぱねてしまってもいけない」という平々凡々な意見が私の結論です。



