FA・ロボット業界の片隅から

FA業界の片隅のフリーランス機械設計者のブログ。 産業用ロボットウォッチが趣味です。

2025国際ロボット展を見て(1) ~FANUCの変容~

2025国際ロボット展、私も見学してきましたので感想をまとめておきたいと思います。
国際ロボット展の感想というより「国際ロボット展をきっかけとして考えたこと」の記事になっていますので、ご了承ください。

まず今回はFANUCの変容についてです。

私の偏見もありますが、FANUCといえば、「質実剛健・自前(内製)主義・プロ指向(分かる人だけついてこい)・安売りはしない」という、良くも悪くも独自路線を行く、技術主導の日本企業の代表例というイメージでした。(※あくまで私のイメージです)

ですが、最近「FANUCが変わったな~」と思う出来事がいくつかありましたので、紹介しつつまとめていきます。

2025国際ロボット展看板

オープンプラットフォーム対応

まずは、国際ロボット展の直前に発表されたオープン化。
多くの方が驚いたかと思いますが、私も「あのFANUCが・・」という思いです。
ロボット新技術:オープンプラットフォームとフィジカルAI - 新商品紹介 - ファナック株式会社

これまでもFANUCは、その時その時のトレンド*1に対して、新製品の発表や技術提携などの動きをとっていました。ですが、過去の提携や協業は、いずれもFANUC自身の技術力を高めるための「閉じた」ものでした。
そのため、昨今のAI・フィジカルAIに関しても、何らかのアクションはあるだろうと予想していたものの、「フィジカルAIを使った新機能が制御装置に搭載!」といった形だろうと思っていました。

が、蓋を開けてみれば、「いろいろ自由に使ってみてください!」という形であり、かなり驚かされました。
同時に発表されたNVIDIAとの協業も、今までの技術提携などと異なり、かなりオープンな思想を感じます。

ROS2・Pythonで動作するとのことなので、特に大学をはじめとした研究機関と親和性が高いのではないかと思います。
実際、そのようなページもありますね:【大学・研究機関の皆様へ】CRXシリーズのご紹介- ロボット情報局 - ファナックの産業用ロボット

個々に契約を結んだ相手とだけ連携する閉じた関係性ではなく、オープンに広く使ってもらうことでユーザを広げるとともに、その中で成功事例が生まれ、大きなビジネス展開につながることを期待しているのではないかと思います。

技術ブログの開設

一番大きなインパクトはオープン化なのですが、他にもFANUCの変容を示す事象がありますので、続けて紹介します。

まずは、情報提供の拡充、技術ブログの開設です。
www.fanuc.co.jp

  • コラム記事
  • 新商品情報
  • メディア掲載のお知らせ
  • その他お知らせ

という4つの分類となっていて、一番古い記事は2024年1月の新商品紹介、コラム記事の初回は2025年7月です。
「コラム記事」は技術ブログ的な内容なのですが、かなり初心者向け・入門編の内容になっています。

FANUCはパブリックな情報発信は最低限という印象だったので、ここでも変化を感じます。
技術的なオープンさだけではなく、情報発信といったソフト面でもロボットへの間口を広げようという意図だと思われます。

廉価版(?)の登場

おそらく2022年から販売なので少し前なのですが、「LR Mate/4-6D Entry」という、廉価版と思われる機種が登場しています。
小型・中型ロボット(R-50iA対応機種) - ファナックの産業用ロボット
Entryは傾斜設置が不可で、J1, J2軸のスペックが若干異なるため、モータ・減速機のスペックを若干落とすことでコストを抑えているのではないかと予想されます。
需要の多い小型ロボットで廉価版を用意することで、導入へのハードルを下げる意図だと思われます。

ついでですが、ロボット機種が、元々は若干統一感のない感じでしたが、シリーズ名+可搬重量+リーチという形に統一されていますね。

  • 以前の機種名・・LR Mate 200iD/4S
  • 最近の機種名・・LR Mate/4-6D

この辺も分かりやすさ重視でネーミングを見直したといったところでしょうか。

デザインも意識し始めた

FANUCのロボットは、直線的で「デザインは気にしてないんだろうな」という見た目でした。
(メカの更新サイクルが長いため、どうしても古く見えるという事情もあるのかもしれませんが)

ですが、ここ最近、デザイン面も気をかけ始めたように見えます。
例えばこちら、機能や外観を追及したインダストリアルデザイン FANUC Robot R-2000iD/210FH (2019年日経優秀製品・サービス賞優秀賞日経産業新聞賞受賞) - ファナックの広告 - ファナック株式会社

機能や外観を追及したインダストリアルデザイン

との文言があります。(2019年なので結構前ですが)

また、今回のロボット展の目玉の1つであったR-2000シリーズの紹介動画ですが、

旧R-2000シリーズとは少し毛色がちがい、シュッとした見た目になっています。

余談ですが、グッドデザイン賞のページでは、企業ごとの受賞歴を見ることができ、
GOOD DESIGN AWARD
FANUCは、2022年にM-1000iAで受賞する前は、1999年が最後、ロボットに限れば1997年が最後です。
グッドデザイン賞は応募した中から選考されるので、応募しなければ受賞もないのですが、ずっと応募していなかったんだろうなと推測できます。
もちろん、デザイン性を重視することと、グッドデザイン賞に応募することはイコールという訳でもないので、決めつけることはできませんが、20年ぶりにグッドデザイン賞を受賞したことは、やはりデザインを重視し始めた1つの顕れではないかと思います。

*1:ビッグデータ・IoT・ディープラーニング(深層学習)・機械学習など