ロボットでも多用している軸受。
機械設計者として駆け出しのころは、とにかく表面的に計算を進めるという感じでしたが、一度ベースになっている考え方を確認してみると、より理解が深まりました。
私自身がもっと早く知っておきたかった、動定格荷重・静定格荷重についてまとめておきます。*1

- 私は軸受の専門家ではありません。あくまで使用する立場で必要なことをまとめました。
- 大枠を掴んでもらうため、細かい数字や数式はなるべく省略しています。*2
- 詳しい計算方法は軸受カタログなどを参照してください。
- どのタイプの軸受を選定するかといったことについては、ここでは扱いません。
はじめに
動定格荷重と静定格荷重はそれぞれ確認する必要があります。
動定格荷重と静定格荷重は出発点が異なるため、「動」で大丈夫なら「静」も大丈夫(もしくは逆)、というような関係性は全くありません。
(私は、材料強度の疲労強度と引張強度のイメージから、動的に大丈夫なら静的にも大丈夫だろう、という感覚を持っていたことがありますが、全くの間違いでした)
軸受のカタログで、いろいろなサイズの軸受の動定格荷重と静定格荷重を見てもらうと、大小がバラバラなことに気が付くと思います。
動定格荷重とは
活用方法
軸受の寿命を予測するために使用します。
「動定格荷重÷実際に軸受にかかる荷重*5」の3乗に比例するので、
例えば、「動定格荷重÷実際に軸受にかかる荷重」=1/2の場合、
寿命は100万回転×1/8 = 12.5万回転となります。
静定格荷重とは
活用方法
短期的な損傷が起こらないかを判断するための指標と言えます。
圧痕ができると動定格荷重で計算した寿命の計算から外れていきますし、回転精度も悪化します。
ミスミの技術資料では、静定格荷重に対する係数(1.0~3.0)が記載されていますが、
べアリングの寿命の見積法
接触圧力は潤滑にも関係してくるため、潤滑条件が厳しい場合は、さらに大きな係数(5~6)にすべき場合もあると思います。
ロボットの出力側で使われる場合、低速・360°未満の揺動・間欠動作と、潤滑不良を起こしやすい条件になりがちです。
参考文献
岡本純三「ボールベアリング設計計算入門」(2015日刊工業新聞社)
※軸受設計にかなり踏み込んだ書籍なので、軸受を使用する立場の機械設計者が購入する必要はないと思います。
*1:本来は基本動定格荷重・基本静定格荷重と記載すべきですが、省略しています
*2:細かいことは注記に書きました
*3:正確にはL10寿命といい、90%の軸受が到達できる寿命です
*4:実験結果に沿うような導出式が与えられており、現在はその式で計算をしています。ISO281, JIS B1518:1992
*5:荷重のかかり方によっては、等価荷重への換算が必要ですが、今回は詳しく述べません
*6:自動調心玉軸受:4600MPa, その他玉軸受: 4200MPa,ころ軸受: 4000MPa
*7:ISO76, JIS B1519:2009
*8:正確には転動体の直径の1/10,000の深さの永久変形(圧痕)